ごあいさつ

理事長理事長

この度、原子力発電環境整備機構(NUMO)の理事長を拝命いたしました、山口です。就任にあたり、ごあいさつを申し上げます。

はじめに、これまで国民社会の便益に貢献するという大所高所のお考えから文献調査を受け入れてくださった北海道寿都町及び神恵内村、佐賀県玄海町の皆さまには深く感謝申し上げます。

特定放射性廃棄物の最終処分事業を、円滑かつ着実に進展させるという当機構の使命を考え、その責任の重さに身の引き締まる思いです。

原子力エネルギーを利用すれば発電によって使用済燃料が発生し、これまでに約19,000トンの使用済燃料が存在しています。加えて、エネルギー基本計画で、原子力エネルギーを持続的に活用するとしています。

このように今後も発生すると考えられる使用済燃料について、私たちの世代の責任としてその対策は確実に進めるべきであり、その帰結として高レベル放射性廃棄物の最終処分の事業実現が不可欠です。日本の原子力政策の基本方針である原子燃料サイクルを確立し、原子力エネルギー利用のシステム全体として完結することで原子力エネルギーの持続的活用は可能となります。令和5年4月に原子力関係閣僚会議で決定された「今後の原子力政策の方向性と行動指針」では、「再処理・廃炉・最終処分のプロセス加速化」は重要施策の一つと位置付けられています。

さて、令和5年第211回国会におきまして、原子力利用の理念・基本方針を定める原子力基本法が改正され、同法第二条の三に最終処分に関する基本的施策が明記されました。

(1) 最終処分に関する国民の理解促進、(2) 最終処分の計画的な実施に向けた地方公共団体その他の関係者に対する主体的な働き掛け、(3) 文献調査対象地区または概要調査地区等をその区域に含む地方公共団体、最終処分に理解と関心を有する地方公共団体その他の関係者に対する関係府省の連繋による支援、(4) 最終処分に関する研究開発の推進を図るための国際的な連携、(5) 原子力発電環境整備機構及び原子力事業者との連携の強化その他の最終処分の円滑かつ着実な実施を図るために必要な施策を講ずるとしています。

国民の皆さまに最終処分事業をご理解いただくとともに、最終処分の計画的実施、文献調査を受け入れていただく地域の拡大に向けて、当機構は国や事業者の連携を強化し、地域への情報提供や地域に根ざした活動に邁進しなければなりません。地域社会との共生は円滑かつ着実な事業進展に欠くことはできません。

それに加えて、最終処分事業で心掛けなければならないことは安全を確保し、それを国民の皆さまにご理解いただくための取組みです。安全確保の基盤は信頼される技術力とエビデンスを備えることです。技術力はそれを目に見える形にしてお示しして初めて価値があるため、最終処分場の安全性と不確かさを評価してその結果を発信することも大切な仕事です。

世界には日本と同じように最終処分事業に取り組む国は多数あり、技術開発や安全評価の確度と説明性を高めるためにはそれらの国との国際連携を深化させることは有効な取組みです。また、海外には地域との良好なコミュニケーション、専門性への社会からの信頼が処分場選定に大きく貢献していることが伺われる事例もあります。このような良好な取組みの経験や教訓を共有することも国際連携の意義であると考えます。

これらの基本的施策にしっかり取り組むことを旨とし、今後の舵取りに努めてまいる所存です。最後に、文献調査を受け入れてくださった北海道寿都町及び神恵内村、佐賀県玄海町の皆さまには改めて深く感謝申し上げるとともに、更にいくつかの自治体で文献調査を受け入れていただきたく心からお願い申し上げる次第です。

2024年7月

原子力発電環境整備機構 理事長

山口 彰