中期人材確保・育成方針
2018年6月20日
原子力発電環境整備機構 中期人材確保・育成方針
1.人材確保・育成の基本的な考え方
地層処分事業は100年を要する長期的な事業であるため、事業の着実な遂行と長期的な展開(事業内容の変容)に備えて、必要となる人材・スキルをあらかじめ明らかにし、計画的な人材の確保と育成を進める必要があります。
本方針では、中期事業目標(期間:文献調査の実施に至るまでの事業期間)を達成するために必要となる人材・スキルを明らかにし、電気事業者や関係機関等の協力も得ながら、計画的な人材の確保と育成に向け「中期人材確保・育成方針」を策定します。
まず、機構が求める人物像は、「高い規範意識」のうえに、地層処分技術の高度化に向けた「プロフェッショナル」として、事業を着実に実現するための「実行力」を兼ね備え、地域のみなさまに信頼され愛される「人間的魅力」にあふれる者です。
そのうえで、中期事業目標を達成するために、必要となる基本的な人材・スキルは、以下のとおりです。
[1]全国的に、地層処分事業の必要性やリスクとその安全確保策についてご理解を深めていただくための人材・スキル(社会のみなさまとの対話能力、技術的信頼性の訴求力)
[2]自治体に文献調査を受入れていただき、同調査を円滑に実施するための人材・スキル(地域対応に係る対話能力、文献調査に係る技術力)
[3]次の段階である概要調査の確実な実施に向けた人材・スキル(地元の合意形成に資する対話・交流能力、概要調査を行うための確かな技術力)
なお、文献調査の実施のみならず地層処分事業を実現するためには、長期にわたる事業期間を通じて社会から信頼される組織であり続けることが重要です。
具体的には、公正で信頼される事業活動を行ううえで、業務管理能力の向上、リスク感度の向上、コンプライアンスの徹底に資する継続的な取組みが求められています。
また、対話活動を進めるうえでは、対話等に参加される方々のニーズに即して活動計画を立案する能力、対話の現場を統括する能力、専門的技術を分かりやすく説明する能力等が必要です。
更に、事業内容や業務品質の一層の向上を図るうえでは、視野を広く持ち、類似の公共事業等の事例や外部の専門家の知見から学び、その成果をチームとして共有する取組みも重要です。
このため、上記[1]~[3]の人材・スキルの確保・育成に際しては、こうした対話活動の改革や組織改革への取組みも、また充実したものとなるよう、OJTや各種研修等の育成プログラムを工夫するとともに、採用活動や出向者確保の際の指標のひとつとしていくこととします。
2.人材確保・育成方針の構成
中期人材確保・育成方針は、以下のとおり、対話活動要員と技術要員に分類して構成します。
(1)文献調査開始までの対話活動における人材確保・育成
対話活動要員に関しては、「全国的な取組みにおける人材確保・育成」(主として上記1[1])と、「地域毎のきめ細かな取組みにおける人材確保・育成」(主として上記1[2])に大別します。
(2)文献調査の円滑な実施に向けた人材確保・育成
技術要員に関しては、「円滑な概要調査実施に向けた準備」(主として上記1[3])と「概要調査地区選定のためのサイト評価」を視野に入れた人材確保・育成方針とします。
3.対話活動要員の人材確保・育成の内容
(1)全国的な対話活動に係る人材確保・育成
a.全国的な対話活動の取組みにおいて必要となる「資質・スキル」
広く社会のみなさまに、地層処分事業の認知度向上、関心の醸成、必要性・安全性に関する情報提供に取り組み、事業に対する理解層の全国大での拡大及び文献調査に協力する地域や住民に対する敬意や感謝の念の国民の間における共有につなげるため、主として、メディアによる広告、双方向情報発信、相互理解活動、ツールの作成・配布等の活動を実施します。
この全国的な対話活動の実施に関しては、マスメディア、ウェブメディアを十分に活用し、広く全国に情報発信するなど、主として次のような資質・スキルが必要となります。
- ・地層処分および原子力・エネルギー全般に関する知識
- ・マスメディア、ウェブメディアに関する知識
- ・社会のみなさまのニーズと目線に合わせたきめ細かな取組みの企画力
- ・誰にでも分かりやすい文章を作成する能力
- ・相手の目線に合わせてタイムリーかつ丁寧にコミュニケーションする資質
b.全国的な対話活動の取組みに寄与する「人材の育成」
全国的な対話活動の取組みにおいて必要となる資質・スキルを持つ人材の育成にあたっては、知識習得、表現力研鑽、対話技能の向上、メディア活用のノウハウの取得等を目指し、機構内の熟練者や外部専門家を講師とした研修を実施するなど、部門ごとの人材育成計画・研修を定め、計画的に実施します。
c.全国的な対話活動の取組みに寄与する「人材の確保」
全国的な対話活動の取組みにおいて必要となる資質・スキルを持つ人材の確保に関しては、電気事業者や関係機関等の協力を得ながら、経験豊富な「出向者」を確保するとともに、長期的には機構の核となる専門的能力を持つ「新卒採用」を計画的に実施します。また、即戦力となるスキルを備えた経験者の「中途採用」も必要に応じて実施します。
(2)地域毎のきめ細かな対話活動に係る人材確保・育成
a.地域毎のきめ細かな対話活動の取組みにおいて必要となる「資質・スキル」
機構は、科学的特性マップにおける好ましい特性が確認できる可能性があると思われる地域を中心に、住民の方々に科学的特性マップの合理性について理解を深めていただき、事業への関心を高めていただくとともに、地層処分事業を自分のこととして考えていただけるよう、地域毎に、主として、地域イベントの開催、メディアによる広告、関係者への訪問活動、地域団体による自主的な学習・情報発信に対する支援等の理解活動を実施します。
この地域毎の対話活動のためには、地域のみなさまから信頼いただけるよう、人間としての魅力、すなわち人間力を高めるべく、常に勉強し、自分なりの考え方や意思を持つよう努力することを十分に心に留め、そのため何が必要なのか考えながら精進することが肝要であり、主として以下のような資質・スキルが必要となります。
- ・地域のみなさまに親近感・信頼感を持っていただけるような思いやりのある誠実な振る舞いとつながりを大切にする心
- ・対話相手の考えを正確に把握し、相手の疑問、不安等に寄り添うための想像力
- ・相手の目線に合わせて誰とでもタイムリーかつ丁寧にコミュニケーションする姿勢
- ・事実を正確に伝える説明力と心に響く応答力
- ・農業関係者、漁業関係者、商工業関係者など地域のみなさまのニーズと目線に合わせたきめ細かな取組みの企画力
- ・地方自治行政、地方創生・地域振興(交付金等)等に関する知識
b.地域毎のきめ細かな対話活動の取組みに寄与する「人材の育成」
地域毎の対話活動の取組みにおいて必要となる資質・スキルを持つ人材の育成にあたっては、幅広く教養を身につけるべく指導するとともに、知識習得、表現力研鑽、対話技能・企画力の向上等を目指し、機構内の熟練者や外部専門家を講師とした研修を実施します。
また、技術要員も含め、顔の見える対話活動の促進に向けて、科学コミュニケーターとしての能力を高めるほか、合意形成・コミュニケーション等に関する社会科学領域の専門家による研究成果等、合意形成に係る知見の収集に努めます。
これらを含めた部門ごとの人材育成計画・研修を定め、計画的に実施します。
c.地域毎のきめ細かな対話活動の取組みに寄与する「人材の確保」
地域毎の対話活動の取組みにおいて必要となる資質・スキルを持つ人材の確保に関しては、電気事業者や関係機関等の協力を得ながら、経験豊富な「出向者」を確保するとともに、長期的には機構の核となる能力を持つ「新卒採用」を計画的に実施します。また、即戦力となるスキルを備えた経験者の「中途採用」も必要に応じて実施します。
(3)文献調査の円滑な実施に向けた人材確保・育成
a.文献調査において必要となる「資質・スキル」
文献調査が始まれば、当該地域において住民の方々のご意見・ご要望を踏まえながら、円滑に文献調査を実施できるように努め、概要調査地点の選定につなげる必要があります。
そのため、まずは、地域の情勢を的確に把握し、地域のみなさまが求める情報を提供し、地域の一員として、信頼を得たうえで、地域のみなさまのご要望を踏まえ、経済社会影響調査の実施に向け、環境アセスメントに類した調査業務や産業連関分析、フィージビリティスタディを実施します。
また、地域共生活動に関する地域のニーズを的確に把握し、先行事例等を紹介しながら地域に応じた提案を行う等の取組みを実施します。
更に、文献調査の進め方や地点選定に向けて自治体や都道府県と協議するほか、自治体による「対話の場」の設置と運営を支援します。
この文献調査の円滑な実施のためには、「(2)地域毎のきめ細かな対話活動に係る資質・スキル」に加え、以下のような資質・スキルが必要となります。
- ・当該地域固有の行政課題や地域事情等に精通
- ・環境アセスメントや経済社会影響調査に対応するための行政手続き・経済分析等のノウハウ等
b.文献調査に寄与する「人材の育成」
文献調査の円滑な実施に向けた資質・スキルを持つ人材の育成にあたっては、(2)b.地域毎のきめ細かな対話活動の取組みに寄与する人材の確保・育成に加え、地域対応業務におけるOJTや電気事業者・経済団体・シンクタンク等の協力による研修など、部門ごとの人材育成計画・研修を定め、計画的に実施します。
c.文献調査に寄与する「人材の確保」
文献調査の円滑な実施に向けた資質・スキルを持つ人材の確保に関しては、電気事業者や関係機関等の協力を得ながら、当該地域の事情に精通した経験豊富な「出向者」を確保するとともに、長期的には機構の核となる能力を持つ「新卒採用」を計画的に実施します。また、即戦力となるスキルを備えた経験者の「中途採用」も必要に応じて実施します。
4.技術要員の人材確保・育成の内容
今後の長期にわたる事業展開を見据え、事業の各段階で必要となる要員数と技術的能力を明らかにし、計画的に技術要員の確保を図るとともに、各段階に相応な人材育成プログラムを構築していきます。
若手職員に対しては、地層処分や原子力安全の基礎的知識を習熟させるとともに、一定レベルの経験を積んだ技術者に対しても専門的能力を充実強化するなど、継続的に知識レベルの向上を図っていきます。
そのうえで、中期的には、以下のとおり、(1)文献調査開始までの対話活動と(2)文献調査の円滑な実施に向けた人材の確保と育成に重点的に取り組みます。
(1)文献調査開始までの対話活動における人材確保・育成
文献調査開始までの対話活動における人材育成については、以下のスキルが必要になると考えられます。
- ・専門家のみならず、一般の方とも適切にコミュニケーションがとれる能力
- ・科学的特性マップや包括的技術報告書等に関する分かりやすい説明やツールの作成ができる能力
これらのスキル習得に向けて、経験の少ない若手技術者に対しては原子力事業者としての安全確保の基本的考え方や地層処分事業者として備えるべき基礎知識、また一定レベルの経験を積んだ技術者に対しては専門的能力の充実強化を図ります。
そのうえで、学会等での専門家との対話だけでなく、一般技術者や大学生等を対象とした説明会等や、一般の方を対象とした説明会等にも参加し、専門家ではない方々に対しても、分かりやすく説明する能力を身に付けます。
(2)文献調査の円滑な実施に向けた人材確保・育成
a.概要調査地区選定のためのサイト評価及び円滑な概要調査実施に向けた準備に係る「人材育成」
文献調査時の概要調査地区選定のためのサイト評価や概要調査実施に向けた準備については、以下の能力の育成が必要になります。
- ・地層処分事業者としてプロジェクトを的確に管理できる能力(計画立案、工程管理、コスト管理、品質管理、安全管理 等)
- ・地層処分に関連する技術分野における現場実践力を伴った専門能力
包括的技術報告書の作成や内外の関係機関との共同研究等の経験を通じ、機構は、既に一定レベル以上の能力を保有していると考えられますが、継続的に高める必要があります。
プロジェクトマネジメントについては、主に管理職職員を対象として強化を図ることとし、現場実践力を伴った専門能力の強化については、以下の育成を行います。
- ・若手職員に対しては、他の事業分野における現場業務を実体験させること等を通じ、現場実践力の強化を図ります。
- ・一定レベルの経験を有する職員に対しては、国内外の関係機関等との共同研究や国際共同プロジェクトへ積極的に参加させ、それらの機関が有する研究インフラの活用等を通じて技術力の向上を図ります。
b.概要調査地区選定のためのサイト評価及び円滑な概要調査実施に向けた準備に係る「人材の確保」
文献調査期間中の技術検討に必要なスキルを保持している技術要員は確保しているものの、複数地点の応募に対応するための要員の確保が必要となります。
人材の確保に際しては、長期にわたる事業展開を見据え、事業の各段階でどのような人材がどの程度必要かを明らかにし、機構として「新卒採用」、「中途採用(キャリア採用)」を、引き続き、積極的に実施します。
また、文献調査期間中に実施する調査業務の一部については高度な専門性が要求されるため、必要に応じて、外部から専門家を招聘して対応します。
あわせて、電気事業者や関係機関等の協力を得ながら、地質環境調査、工学的対策、工事費用積算、安全評価業務経験者等の「出向者」を確保することとします。
以 上