2023年5月8日
原子力発電環境整備機構 対話・広報活動計画
「中期事業目標」に定める「対話活動計画」を「対話・広報活動計画」として以下のとおり改定する。
1.対話・広報活動の基本的な考え方
原子力発電環境整備(以下「機構」という。)は、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(平成12年6月7日法律第117号)(以下「最終処分法」という。)、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」(令和5年4月28日改定)に基づき、対話・広報活動を実施する。
機構は、原子力発電を利用してきた現世代において最終処分の道筋をつけることが、廃棄物の管理に関する将来世代の負担をできるだけ小さくすることにつながるという考えの下、最終処分の実現に向けて技術的な信頼性確保に努めるとともに、国や発電用原子炉設置者と連携して適切な役割分担の下で全国における関心喚起及び理解醸成に努め、できるだけ多くの地域で処分地の選定に向けた段階的な調査(以下「処分地選定調査」という。)を実施することを目指す。
処分地選定調査や最終処分の実施を円滑に実現していくためには、広く国民の理解と協力を得ながら、処分地選定調査を行う地域(以下「調査地域」という。)の住民の理解と協力を得ることが極めて重要である。
したがって、地層処分事業が長期間にわたる事業であることに鑑み、国民に幅広く理解を深めていただくため、若年層をはじめ、国民各層に対する地層処分の認知度の拡大及び関心の向上を目指し、対話・広報活動に積極的に取り組む。また、調査地域においては、地域の皆さまからの信頼構築に努めながら、地層処分事業の概要や安全性のほか、地域の将来に関することも含め、きめ細かな対話・広報活動を行う。
2.訴求事項
機構は、これまでの対話・広報活動において、地層処分事業の概要、必要性、安全確保の考え方等について全国の皆さまへお伝えし、地層処分事業に関する認知度の拡大及び関心の向上に努めてきた。
今後、地層処分事業について更に理解を深めていただくため、全国及び処分地選定調査を実施している地域の皆さまに、対話・広報活動を通じて以下の事項を訴求していく。
(1)地層処分の必要性
ア.既に発生している高レベル放射性廃棄物は一時的に保管をしている状態であるため、その最終処分の実施は、原子力発電の今後の在り方とは切り離して取り組まなければならない。
イ.原子力発電を利用してきた現世代において最終処分の道筋をつけることは、将来世代が廃棄物を管理する負担をできるだけ小さくすることにつながり、その実現は社会全体の利益に貢献する。
(2)地層処分の安全性
ア.「地層処分は、将来世代の負担を最大限軽減するため、長期にわたる制度的管理(人的管理)に拠らない現時点における最も有望な方法である」ということが、国際的に共通した考え方となっている。
イ.核燃料サイクル開発機構(現日本原子力研究開発機構)による「『わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性―地層処分研究開発第2次取りまとめ―』(1999年)」等から、日本においても地層処分が技術的に実現可能であることが結論づけられている。
ウ.機構は、これまでに蓄積されてきた科学的知見や技術を統合し、包括的技術報告書を取りまとめるなど、安全な地層処分の実現に向けた取組みを進めている。
エ.同報告書の国内外専門家によるレビューでは、現段階のセーフティケースとしての信頼性が確認されるとともに、機構は適切かつ十分な技術的能力を有すると評価されている。引き続き海外の研究機関と連携し、技術的な信頼性を継続的に高めていく。
オ.同報告書を地層処分の技術的な信頼性を説明する拠り所として活用し、安全な地層処分の実現について、全国の皆さまへ分かりやすく説明していく。
(3)文献調査
ア.文献調査は、次段階の概要調査地区を選定するために、必要な文献・データを収集・整理し、整理した情報を用いて火山や活断層等による地層の著しい変動がないかなど、最終処分法に定められた要件に照らした評価を行う机上調査である。(したがって、ボーリング等の現地作業は、概要調査以降で実施する。)
イ.文献調査は、いわば対話活動の一環でもあることから、機構は、調査地域に交流センターを開設し、常駐する職員を中心に顔の見えるコミュニケーション活動を進める。
ウ.機構は、地域の皆さまに地層処分事業に関する議論を深めていただけるよう、対話の機会創出への協力を行う。
エ.機構は、「対話の場」等において、地層処分事業の概要、処分技術、安全対策等に関する説明を行う。また、概要調査に進むかどうかを検討していただくための材料として、機構が収集・整理した文献・データ及びそれらを評価した結果等について丁寧に説明する。
オ.機構は、地層処分事業を将来の一選択肢として議論していただけるよう、地域の皆さまからのご意見・ご要望に基づき、議論に資する情報を提供する。
カ.処分地選定調査は、都道府県知事及び市町村長のご意見を聴いてから次の段階に進むことが法定されており、自治体の意向に反して進められることはないことが明らかになっている。
(4)地域共生
ア.地層処分事業は、調査から施設の建設、操業、閉鎖まで100年以上の期間を要する大規模かつ長期にわたる取組みである。安全な地層処分の実現は、調査を受け入れてくださる地域及びその周辺を含む皆さまのご理解とご協力、そして地域の持続的な発展なくして成し得ないことから、職員は地域の一員として、地域のご要望を丁寧にお伺いし、将来ビジョンの設計、地域づくり及び持続的な発展に貢献する。
3.実施計画
(1)全国的な取組み
機構は、全国のできるだけ多くの地域において地層処分事業に関心を持っていただくとともに、文献調査を受け入れていただけるよう、全国各地できめ細かな対話・広報活動を実施するほか、若年層をはじめ、国民各層の関心喚起のため、ウェブメディア等を活用した広報活動、人が集まるイベント等での理解促進活動など、多様な方法で対話・広報活動を展開する。また、全国の皆さまに対し主体的な学習活動を呼びかけ、その成果を広く共有する。
具体的な活動は、以下のとおり。
ア.対話型全国説明会
上記「2.訴求事項」について分かりやすく説明すること及び参加者の質問・疑問に対して丁寧に回答することを重視し、少人数グループ単位のテーブルトークでの開催を基本とする。また、参加者とフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを図ることを通じて、文献調査を開始した地域に対して敬意や感謝の気持ちを持っていただくことを含め、地層処分事業に対する一層の関心喚起と理解の深化につながるよう努める。
イ.自治体や経済団体等への訪問
様々な情報提供の機会を利用して、全国各地の自治体や経済団体等を訪問し、きめ細かな対話・広報活動を実施する。処分地選定調査を行う地域の方々に地層処分の必要性や安全確保の考え方の理解を深めていただくとともに、自分事として関心を持っていただけるよう、積極的な情報提供を行う。
ウ.国及び発電用原子炉設置者等と連携した対話・広報活動
国や発電用原子炉設置者との連携を一層強化し、全国の自治体、経済団体等を個別に訪問すること等により、相互理解の促進を図る。相互理解促進活動を行う地域の体制を構築し、自治体及び関係住民の声を従来以上に丁寧に聞くなど、誠実かつ真摯な対話・広報活動を積み重ねていく。
エ.地域における理解の拡大を目指した取組み
上記「ア.対話型全国説明会」から「ウ.国及び発電用原子炉設置者等と連携した対話・広報活動」までのそれぞれの取組みを通じて地層処分事業に関心を持っていただいた方々を対象に、継続的な情報提供や訪問により理解の深化及び関係の構築を図った上で、地域において勉強会の開催や学習団体の立ち上げ等を推進いただけるよう働きかけていく。
オ.メディアによる情報発信
地層処分事業に関する全国的な認知、関心の高まり及び理解促進を図るため、ウェブメディア等の多様な媒体を訴求対象の属性(地域、年齢、生活様式等)に応じて活用する。
カ.次世代層へのアプローチ
学校の教育現場において、地層処分事業を自らにとって重要な課題として認識していただき、地層処分に関する授業実践が促進されるよう、機構職員が学校へ赴き出前授業を行うなど、教育現場での実践を積み重ねるほか、教育関係者等に対する授業研究支援や情報提供、教育に関する関係行政機関との対話に努める。また、地層処分展示車等によるショッピングモールや科学館等、全国各地での親子向けイベント、一般の次世代層向けイベントを更に充実させる。
キ.報道関係者への情報提供
報道関係者に対しては、プレスリリース等を通じた地層処分事業に関する継続的な情報発信を実施するとともに、問合せ等に対して丁寧に対応する。
ク.学習団体の支援
機構は、学習団体をはじめとする地層処分事業について「知りたい」「学びたい」という方々に対して、処分地選定調査の概要説明を含めた勉強会の開催や視察等の支援活動を継続する。また、全国の団体間での交流・連携・ネットワーク作りを促進するとともに、学習団体には自ら積極的に取組みの成果等を発信していただけるよう支援をするなど、学習活動が広がるための取組みを実施する。
(2)処分地選定調査地域及び周辺地域における取組み
機構は、調査地域の皆さまに地層処分事業等についての議論を深めていただけるよう、地域との丁寧な対話・広報活動を継続的に実施する。
具体的な活動は、以下のとおり。
ア.「対話の場」
調査地域の皆さまと情報共有ができる貴重な機会として、「対話の場」の運営や協力・支援を行う。「対話の場」は中立性・公正性かつ透明性が重要であることを念頭に、処分地選定調査の進捗状況をはじめ地層処分事業の安全確保策やリスクなど、様々な情報を提供する。
イ.「対話の場」でのご意見を起点とした対話・広報活動
調査地域の皆さまの声を踏まえつつ、国とも連携し、説明会、勉強会、施設見学の開催など、地域における対話・広報活動を実施することにより、地層処分事業や機構の事業活動等に対する理解をより深めていただく。
ウ.処分地選定調査の周辺地域へのきめ細かな情報提供
地層処分の概要や調査地域での「対話の場」の模様等について、処分地選定調査の周辺地域の皆さまに対して情報提供を行う。また、地層処分事業が地域の経済社会や自然環境に及ぼしうる効果やリスクの検討に活用いただくため、調査地域の要望を踏まえて、地域の発展ビジョンの検討に役立てていただける情報提供に努める。加えて、調査地域のみならず周辺地域や所在都道府県においても、地層処分事業や機構の取組みに関する理解を深めていただけるよう、多様なメディアや施策を通じて事業活動等に関する情報をタイムリーに分かりやすく発信する。
4.マネジメント
(1)体制整備
北海道寿都町及び神恵内村において文献調査を開始したことに伴い、調査地域での対話・広報活動の拠点として、「NUMO寿都交流センター」及び「NUMO神恵内交流センター」を開設するとともに、両交流センターを支援する「札幌事務所」を開設し、対話・広報活動に関する企画調整機能及び機動的な地域対応機能を強化した。今後も事業の進展に応じて、柔軟に組織体制の見直しを図っていく。
(2)人材育成
対話・広報活動の応対品質の向上、関連知識の蓄積・伝承を図るため、人材育成策として、コミュニケーションスキル・業務知識・ノウハウの向上、日常業務におけるOJT、外部専門家による各種研修、勉強会等を継続的に実施する。
(3)説明資料等の充実
処分地選定調査の進展に応じて、多様なニーズに応えられるよう資料を準備する。
(4)対話・広報活動の活動内容の分析と改善
対話・広報活動等を通じて、参加者からいただいたご意見等を貴重な情報として分析し、活動が一層充実したものとなるよう改善を図っていく。
(5)関係機関との連携等
全国各地での対話・広報活動において、引き続き国や発電用原子炉設置者と密接に連携する。特に発電用原子炉設置者とは、「対話型全国説明会」の開催をはじめ、各地域できめ細かな対話・広報活動を推進するに当たり、更なる連携強化を図る。また、これらの取組みは、専門家や学識経験者の知見も得ながら進める。
以 上