対象・教科 小学校5年 社会科 工業生産と貿易
小学校6年 理科 電流が生み出す力
※本授業レポートは2014年3月9日のエネルギー環境教育教職員セミナー全国大会での事例発表にもとづき作成されています。

発表の内容

 2014年3月9日に行われたエネルギー環境教育教職員セミナー全国大会において、香川エネルギー環境教育研究会から、5年生社会科の「日本の輸入の特色」と、6年生理科の「発電の仕組みと電気の道のり」の二つの授業が発表されました。
 「従来は、空気・水・食料があれば生きていけるというのが一世代前でしたが、 戦後はエネルギーがないと、人は生きていけなくなりました。また、生活スタイルが変わっていくにつれて、従来では考えられなかったような様々な環境問題が発生してきています。上記のことを知り、判断するもとになることを子どもたちに正確に伝えていくことが大事なのではないかと思います。特に小学校は担任制ですので、一人の担任、一人の人間としてどう考えていくかということを考えながら、授業づくりを進めました。」という思いとともに、授業計画について説明されました。
 各教科でエネルギー環境教育に視点を当てた授業を行う事が必要で、社会科や理科・家庭科・総合的な学習の時間などを活用して発展的な学習や横断的な学習として進めてきましたが、その中でも今回は社会科と理科に焦点を当てて行った実践について発表されました。
 質疑応答では、小学校では教員から資料を提示して知識を得ることだけではなく、児童から自主的に資料を探すことで判断力を養わせたり、こうした問題に対してどのような意思決定のプロセスを取ることが出来るのかを学ぶことも必要ではないかという意見が出ました。

香川エネルギー環境教育研究会 亀井氏


日本の輸入の特色

 5年生の社会科においては、「工業生産と貿易」の単元において「日本の輸入の特色」 という授業実践が発表されました。
 日本は様々なものを様々な国から輸入していることを知った上で、資料から輸入品の変化や輸入国の特色などを学びました。その中でもエネルギー資源に着目し、石油やウランから日本のエネルギー事情について学習しました。
 ウランとは何かということに着目し、原子力発電の燃料に使われていること、100%輸入に頼っていること、石油とともに他の資源も外国から輸入しているから今後どうしていけばいいのかを考えました。
 授業を通して、子供たちは、工場や日常生活にエネルギーが使われているという意識はなく、またウランが原子力発電の燃料として使われていることを知らなかったため、基礎的な知識から教える必要があると感じられたことも合わせて発表されました。これまでの授業計画や実践は直接的に地層処分を扱っていました。この授業については普通の理科の地層の授業だと思われると思います。


単元名 小学校5年生社会 工業生産と貿易
単元計画

貿易額の多い港・横浜港

・横浜港の輸出入の特色を調べ、わかったことを発表する。
・我が国全体の工業生産における貿易の特色を予想し、学習問題を設定する。

日本の輸入の特色  【本時】

・我が国の主な輸入品や輸入相手国を調べ、発表する。
・主な輸入品の取り扱い額の変化を調べ、我が国の工業生産における輸入品の変化を考える。
・エネルギーの原料輸入についても視点をあて考える。

機械類の多い日本の輸出

・我が国の主な輸出品や輸出相手国を調べ、発表する。
・最近の工業における外国とのかかわり方を調べ、変化を明らかにする。

日本の貿易の特色をまとめよう

・今までの学習を振り返り、貿易の特色をノートにまとめる。
・貿易における問題点を明らかにし、自分の考えをまとめ発表する。

指導案

日本の輸入の特色

指導案

学習活動 児童の意識の流れ 教師の支援・評価
学習課題をつかむ。

日本では工業に関係のあるどのようなものが輸入されているだろうか。 

  • 前時の学習から輸入には原料や燃料が多いということを確認する。

輸入品や輸入相手国を調べ特色に気付く。

主な輸入品と輸入相手国を調べよう

【輸入品】
原油・機械類・化学製品・原料品・食料品

【相手国】
1位 中華人民共和国
2位 アメリカ合衆国
3位 サウジアラビア

・相手によって、品物が違うのだなあ

  • 輸入品を一つ一つ挙げることで原材料が多いことに気付くようにする。
  • 相手国による品目の違いに目を向ける。

輸入品の変化を調べ、特色を明らかにする。

毎年同じものを輸入しているのではないぞ、なぜだろう。

・原油が増えたり減ったりしているなあ。
・機械も増えたり減ったりしているなあ。
・加工貿易から、他国の機械の輸入をするようになったのだな。

  • 増えているものと減っているものに視点をあてて考えるよう助言する。
エネルギー資源について考える。

・エネルギー資源も輸入に頼っているんだなあ。
・原油だけでなく天然ガスやウランなどいろいろなものを輸入しているのだなあ。

ウランはどのようにエネルギーとして使っているのだろう。

・資料をみると、原子力発電の燃料として使われていることが分かったよ。
・日本のエネルギーは輸入に頼っていることが分かったよ。

  • エネルギー資源を輸入に頼っていることを「エネルギー資源の輸入」ワークシート7の資料を使うことで焦点化する。
  • 資料から原子力発電の原料として使っていることを知らせる。
生活と工業生産における輸入品のとの関係をまとめる。

・外国と上手につきあい資源を大切に使って、豊かな暮らしを続けたいなあ。

評 資料を基に日本の貿易のうち輸入品の特徴を知ることができたか。

発電の仕組みと電気の道のり

 6年生の理科においては、 「電流が生み出す力」の単元において「発電の仕組みと電気の道のり」という授業実践が発表されました。
 本授業は、四国電力エネルギー出前教室の出前授業を活用しながら展開しました。まず各家庭のコンセントにどのようなしくみで電気が届けられているのかを学習しました。
 次に、実験した手回し発電機によって発電した方法と比べて、火力発電所や原子力発電所ではどんなふうに発電しているのかを知りました。その後発電のメリット・デメリットを知った上で、かねてから交流のある福島県内の小学生に来てもらい、彼らと触れ合う中で福島では土に触れない生活をしていることを知り、放射線の性質について学習しました。


単元名 小学校6年理科 電流が生み出す力
単元計画

電気はつくることができるのだろうか

・電気はどのようにしてつくられ、どんなところで利用されているか、知っていることを話し合う。
・電気をつくり出す方法を考え、モーターを回すなどして、電気ができることを確かめる。
・手回し発電機でつくった電気をいろいろな器具に流し、どのような現象が起こるか調べる。
・電気をつくり出す方法や、つくり出した電気はどのようなものに変えることができるかについてまとめる。

作った電気はためることができるのだろうか

・身のまわりに、ためた電気を利用している道具があることを知り、手回し発電機やコンデンサーなどを使って、電気をためることができることを確かめる。
・電気はコンデンサーなどにためて使うことができることをまとめる。
・資料を使って電気を効率的に使う方法について調べたり、エネルギー資源の有効利用について考えたりする。

電気は熱にかえることができるのだろうか

・身のまわりで、電気を熱に変えて使っている物を探し、電熱線に電流を流すと、発熱することを確かめる。
・電熱線の太さを変えると、発熱のしかたがどのように変わるかを予想して調べ、電熱線の太さと発熱の関係についてまとめる。

発電の仕組みと電気の道のり  【本時】

・電気エネルギーの基礎知識、各種発電のしくみや特徴を知る。
・家庭に電気が届けられるまでの道のり等を知る。
・発電のから発生するごみを調べてみよう。

電気を利用したものを作ろう

・電気の性質を利用したおもちゃをつくる。
・電気のはたらきや利用について、学習したことをまとめる。

指導案

発電の仕組みと電気の道のり

指導案

学習活動 児童の意識の流れ 教師の支援・評価
学習課題をつかむ。

Q1 電気はどのようなしくみでコンセントに届いているのだろうか 

発電所から電線を通ってきているのだろう

  • 自分たちの生活の中で電気とどう関わっているのか考えて発言するように促す。

電気の通り道を調べる。

資料をもとに調べてみよう

出前教室の先生に聞いてみよう

電灯引込み線→配電線→変圧器→変電所→送電線→発電所の順で家に届いているのが分かった。

いろいろな所を通って家にきているのだなあ

  • 具体的に自分の家の分電盤やメーターに視点をあてる。
  • ワークシート3を配布する。
  • 鉄塔や電柱の意義を知れせるために、送電線や配電線の実物を見せてもう。

発電の方法を調べる。

Q2 電気はどのようにして作られているのだろうか 

発電所で作られているのは分かるが、どのような仕組みで作っているのか分からないなあ。

資料で調べてみよう
・火力発電や水力発電、原子力発電と地熱発電や太陽光発電などの自然エネルギーがある。

出前教室の先生に聞いてみよう

・水力発電は水でコイルを回して発電しているんだなあ。
・火力発電は石炭や石油を燃やし水蒸気を作り蒸気の力でコイルを回しているんだ
なあ。
・原子力発電は水蒸気を原子炉の熱で作りコイルを回しているんだなあ。
・主な発電はコイルを回して発電する仕組みは同じだということを知ったよ。

・手回し発電と同じようにコイルを回して発電しているのだなあ。コイルを回す方法としていろいろな仕組みあることから、発電方法が違うことが分かったよ。

  • 手回し発電機や発電したときのことを振り返らせる。
  • ワークシート4ワークシート13を配布する。
  • いろいろな発電方法について模型を使って説明してもらう。
  • 電気が起きることを確認させるために発電の模型を提示する。
  • 水力や火力、原子力発電の模型を使って発電の様子を確認する。
発電についてまとめる。

それぞれの発電方法のメリットとデメリットはないのだろうか。考えてみよう。

・原油だけでなく天然ガスやウランなどいろいろなものを輸入しているのだなあ。

  水力発電 火力発電 原子力発電
メリット ごみの発生がない すぐに電気が作れる 小さな燃料で発電できる
デメリット 水不足になると発電できない CO2などのごみが出る 放射線が発生する

・発電ではいろいろなごみも出ているのだなあ、初めて知ったよ。

  • 今日学んだことをもとに考えてみるよう助言する。
  • 毎年の水不足から考えさせる。
  • ものの燃え方の学習から考えさせる。
  • 福島の児童との交流から考えさせる。

放射線について調べる。

放射線とは何だろうか調べてみよう

・いろいろなものから発生しているのが放射線だなあ。
・放射線を発生するものが放射性物質なんだなあ。
・この中でも大変なのは福島の友達がいっていた、放射線だよね。
・水溶液の学習で気付いた強い酸性やアルカリ性の水溶液にもとかされないガラス瓶に入れて置くことはできなのだろうか。

自分たちの考えをまとめる。

・電気は限りある資源であることが分かった。また、発電でいろいろなごみもでていることが分かった。電気を使ったあとのごみのことも考える必要があるなあ。

評 学んだことをもとに自分の考えがまとめられたか。

  • 一人一人に自分の考えをもとに実践していこうとする意欲を持たせる。

授業で使用した資料


ワークシート 出典元
文部科学省、経済産業省・資源エネルギー庁

放射線の副読本 出典元
文部科学省