~放射性廃棄物処分をテーマに科学技術コミュニケーションを考える~
実施日時 | 2014年1月15日(水)14:30-15:20 (50分) |
実施場所 | 鹿児島県立加治木工業高等学校 |
対象 | 高校3年生 (機械科) 40名 |
当日の様子
2014年1月15日、鹿児島県立加治木工業高等学校において、ロングホームルームの時間に授業が行われました。
第1回目11月22日・第2回目12月6日・第3回目12月13日の授業では、放射性廃棄物について調べ学習や、グループごとの意見交換を行ってきており、第4回目の本授業では調べてきたことや自分たちの考えを発表しました。
本授業の最初には、今までの授業の振り返りをしました。
1回目の授業では、放射性廃棄物についての知識を深めました。新聞記事を読んでわかったことや疑問点を出しあい、映像資料を見て海外での放射性廃棄物処分の現状や問題点を知りました。
2回目の授業では、廃棄物処分について自分の意見を考えました。処分方法をどうするのか考えをまとめた上で、賛成反対するのはどんな人達なのかを考えました。また、科学技術では解決しきれない問題を話しあうために必要な考え方を、映像資料を見て学びました。
3回目の授業では、日本の放射性廃棄物処分問題について新聞記事や書籍から知識を深め、その上で発表の準備を進めました。
4回目の本授業では、今までの授業で学んだことや自分たちで調べたことを、各グループでまとめて発表しました。
「原発問題について、知らないことのほうがはるかに多く、現状ではなにも決断できないと思う。意見を述べる場や、説明を聞く場を設け、少しでもその問題に関わりを持とうとするべきだと思う。」「自分たちで廃棄物をどうするか等を決めることはできないので廃棄物について知識を深めていく。」などの意見が発表されました。
最後に先生からまとめとして、放射性廃棄物処分や科学技術についての書籍からの引用文や、情報を得る手段として経済産業省のホームページの紹介がされた上で、「答えを出すのが難しい問題でも、いずれ答えを出さなければいけない。それには無関心・無知ではいけない。様々な情報が提供されていることについて、これから社会に出ていくにあたって考えていってほしい。そのきっかけとなるよう、この授業を行った。就職したら君たちはそれぞれの職のスペシャリストでもあり、一市民・一消費者でもある。その両方の立場から、安全・安心ということについて考えていってほしい。」というメッセージが送られました。
今年3月に卒業する高校3年生を対象とした
加治木工業高校 冨ヶ原先生
指導案(全4時間)
ねらいと学習活動 | 支援及び留意点 | 授業の様子 | |
1
時 間 目 |
問題提起
・2社の新聞記事を読む・読んで分かったこと。疑問に思ったことを各自ワークシートに書く ・グループで意見交換、発表 |
・始めは記事の内容から理解と疑問を出す。 | |
・記事の背景を理解する映像を見る |
・理解を深めるため映像を活用する。 ・使用済み燃料と再処理後の高レベル放射性廃棄物の区別はせず、放射性廃棄物と扱った。 |
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2
時 間 目 |
自ら考え、討論し、発表する
・自分ならどう解決するか |
・発表内容に応じて既存の考え方を解説 | |
科学技術コミュニケーションついて考える
・生徒から発表の内容で討議を進める ・廃棄物処分問題の解決の糸口として参考になる映像を見る |
・小林傳司教授の「社会と科学技術の関係を考える」から4回シリーズ全体の内容を簡単に触れ、トランスサイエンスについて説明する |
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3
時 間 目 |
これまでと現在の政策と技術の理解
・これまでの日本の原子力政策の説明 ・「できたこと」と「できていないこと」 ・新聞記事を読む ・分かったこと、疑問に思ったことをまとめ、グループで話し合う ・発表の準備 ・新聞記事を読む |
・理解できなかったことや疑問に思ったことについて両論の見方に配慮して解説を行う |
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4
時 間 目 |
今までの授業の振り返り
・放射性廃棄物処分についての新聞記事からわかったこと、疑問点について。海外の放射性廃棄物処分の現状。 |
・どのような資料を用いてどのようなことを学んだかの確認 | |
グループごとの発表 |
・4名1グループ ・10グループ、各4分以内 発表して欲しい項目はフォーマットに入れこむ |
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まとめと参考 |
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授業を終えて
冨ヶ原先生のコメント
今回高校3年生向けに授業を行いましたが、これから生徒たちが社会に出るにあたり、答えをだすのが難しい問題にぶつかることが予想されます。今回のテーマも非常に難しいものだが、生徒が考えるきっかけになってくれればと思い授業を実施しました。
放射性廃棄物の問題、原子力エネルギーの問題は非常に専門性の高い問題で、そのほとんどが一般市民に届いていません。新聞の記事は事実をうまくまとめているので、記事の情報をきっかけに生徒自らいろんな情報源を使って集めていくことが出来ました。様々な意見が出る中、同じグループのなかで違う意見も出るのも当然のことなので、その場合はそのまま複数の意見を書き出すということをさせました。
専門知識を持っていない教師が専門性の高い授業を行うことに関しては、専門的な部分ははずして問題ないかと思います。自ら情報を手に入れ、その情報の価値をどう判断するかという部分に教育的視点を置いていけば、専門外の先生でも授業に取り入れることができます。
生徒の感想
◯原発事故はとても難しい問題です。決めるためには、1人1人がしっかりとよく考え、自らの意見を持って行動できなければならないと思います。国民が意見をしっかりと持つことでこの問題は進んでいくのではないでしょうか。
◯今回のビデオや話し合いを通し、放射性の廃棄物は、とても複雑な内容があり、また色々な問題がでてきているなと思いました。また、それらをなくすことが出来る最も良い策がでていないので、その問題を国民全体で真剣に考えるべきだと思いました。この問題を解決するには、多くの時間が必要だと思うので、しっかり話し合うべきだと思います。
◯常に今現在の政治の動向に気を配り、国の方策を知っておくことが、最低限のしておかなければならないことではないかと思います。たとえ、政治や科学の専門的なことがわからなくても、この問題に目を背けてはいけないと思います。
授業で使用した資料
【新聞記事】原発社会全体で議論を (朝日新聞 平成25年11月13日付)
【テレビ】NHK総合 キミたちの未来 僕たちの選択 ~時任三郎 世界エネルギーの旅~ (2012年4月30日放送)
【テレビ】NHK白熱教室JAPAN 小林傳司教授 「社会と科学技術の関係を考える」 4回シリーズ (2011年10月30日 (日) から 2011年11月20日 (日)放送) 第4回
【新聞記事】最終処分こだわらず(南日本新聞 平成25年11月8日付)
【新聞記事】国が候補地を提示(南日本新聞 平成25年11月21日付)
【新聞記事】原発活用を明記(南日本新聞 平成25年12月6日付)
【新聞記事】「原子力 負の遺産」を取り扱った記事(西日本新聞 平成25年11月3日付)
【書籍】原子力 負の遺産(北海道新聞社)
【WEBサイト】放射性廃棄物のホームページ (経済産業省 資源エネルギー庁)
【WEBサイト】経済産業省 総合資源エネルギー調査会電気事業分科会 原子力部会放射性廃棄物小委員会