実施日時 | 2014年2月14日(金)9:30-11:20 |
実施場所 | 山形県河北町立谷地西部小学校 |
対象 |
小学5年生 9名 小学6年生 9名 |
当日の様子
2014年2月14日、山形県市河北町立谷地西部小学校において、5,6年生合同で「放射線リスクと私たちの生活/高レベル放射性廃棄物って?」についての学習が、京都大学大学院の幸浩子氏による出前授業として2校時にわたって行われました。
この授業は、実践校において理科・総合的な学習の時間に行われている「環境教室Ⅸ ~発電とエネルギーの問題~」のひとつとして実施されました。
本実践は、「放射線はどこにあるのか、種類、影響、利用法、リスクについて考えましょう」という呼びかけから始まりました。
1時間目は、放射線についての基本的な知識を学習しました。
本題に入る前に、放射線と聞いたら何を感じるのか・知っているのかを書き出しました。
クイズ形式で、放射線・放射能・放射性物質の違い、放射線はどこにあるのか、五感で感じ取れるのか、放射線はどのように危険で、どうすれば防ぐことが出来るのか、どのように生活の中で役立っているのかという事について学習しました。
放射線について基礎的な知識を学習したあと、霧箱で放射線の飛跡を観察しました。
観察の結果も踏まえ、二択問題を解きながら放射線についての基礎的な知識がどれだけ定着したかを確認しました。
終わりに、授業の最初に答えた、放射線と聞いたら何を感じるのか・知っているのかについてもう一度書いてみることで、この一時間でどれだけ知識が身についたか、放射線への感じ方が変わったのかを一人ひとりが明確にしました。
2時間目は、放射性廃棄物の処分について班ごとに話し合いました。
原子力発電所で出てくる廃棄物には、低レベル放射性廃棄物と高レベル放射性廃棄物があること、高レベル放射性廃棄物の処分方法について、緩衝材に使用されるベントナイトの性質についての実験を踏まえて学習しました。
その後班にわかれ、地層処分、海洋底処分、氷床処分、宇宙処分、長期管理、それぞれについて話し合いました。
最後に、各班がそれぞれ1種類の処分方法について考えたことをまとめ、発表しました。
5,6年生の合同授業で行った
京都大学大学院 幸浩子 氏
単元計画
環境教室Ⅸ ~発電とエネルギーの問題~ | |
教科 | 理科・総合的な学習の時間 |
学習のねらい |
◎日本では、いろいろな燃料を組み合わせて、工夫して発電している。 どんな発電にも様々な問題があり、わたしたちのくらしや環境と深いかかわりがある。 |
単元計画 |
1 発電の仕組みを模型で実験しよう
(1)水力発電 2 さまざまな発電の仕組み
(1)原子力発電、太陽光発電 3 私たちを取り巻く環境について
(1)エネルギーの資源はどれだけ? |
指導案
1時間目:放射線リスクと私たちの生活
指導案 スライド授業展開・内容 等 | 評価方法 等 | 授業の様子 | |
2 分 |
授業前の放射線に関する知識・意識調査 |
自由回答式・記述式(省略しても良い) 挙手だけでも。 |
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25 分 |
座学:クイズ大会
(説明→問→解答と解説)
問:放射線は |
全体講義
正答数 |
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10 分 |
霧箱実験実験の説明霧箱について:作り方(霧箱は8割方作成済)、注意事項(ドライアイスの扱い、懐中電灯の当て方、飛跡が見えないときなど) 観察ノートの取り方:飛跡を描こう.どんな飛び方があった?強い、弱い?遠い?近い?など |
児童同士のかかわり合い、会話、対話、参加の様子 観察ノート |
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5 分 |
確認テスト (逆転クイズ)
・放射線、放射能、放射性物質-言葉の意味 |
正答数 | |
3 分 |
授業後の知識・意識調査まとめ五感に感じない、自然放射線はどこにでも有る、測ることができる、日常浴びる放射線は少しなので心配ない、一度にたくさん浴びると危険、正しい知識を持てば怖くない、生活の中で利用されている |
自由回答式・記述式(省略しても良い) |
※「放射線リスクと私たちの生活」は 住友財団環境研究助成で作成された授業です。授業の詳細・応募についてはこちらをご覧ください。
2時間目:高レベル放射性廃棄物って?
授業展開・内容 等 | 評価方法 等 | 授業の様子 | |
2 分 |
導入
放射線授業からの導入 |
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10 分 |
座学:スライドを用いた授業
・高レベル放射性廃棄物は何か |
参加の様子 |
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緩衝材(ベントナイト)実験
実験の説明:ベントナイトに、水の入った容器をすばやく上下逆さまにしてかぶせる 観察のポイント:水と触れたベントナイトがどのようになったか、ベントナイトに穴を開けても水が漏れてこないか |
対話、参加の様子 | ||
15 分 |
サイエンス・カフェ
1つの処分法について2分、5つの処分方法について、考え、話し合う 考えるポイント:どんな方法か、どこでやるのか、だれがやるのか、いい方法なのか、問題点はないのか、問題点はどうやったら解決するのか 自分たちの班に帰って、模造紙に書いてある他の班の意見についてまとめる。 まとめるポイント:面白い質問、大切、というところに印をつけて注目する |
児童同士のかかわり合い、会話、対話、参加の様子 アクティビティシート |
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15 分 |
グループごとの発表各班1分間で発表 |
発表内容 発表の様子 |
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3 分 |
まとめ |
授業を終えて
幸先生のコメント
原子力というのは大きなエネルギーを産むと同時に大きな問題も残しています。
この問題の一つがゴミです。高レベル放射性廃棄物の処分問題は避けて通ることはできません。これからの社会を担っていく子供たちにじっくりと考えてもらいたいと思いました。
この授業では、子供にとって楽しいこと・わかりやすいこと・すべての子供たちが学習活動に参加できることを目標としています。
学びが社会につながるよう、また、問題に直面した時に考えを出しあいお互いに考えを知ろうとするような、深いコミュニケーションを取れるよう、工夫をしました。それがカフェ方式です。この方式をとることで、短時間ではありますが子どもたちはすべての処理方法について考える機会を持てました。
短時間の中で、子どもたちが興味を持って基本的な知識を学び、体験しながら考えなければならないという点が課題でした。
すべての子がすべての処理方法について触れて考えられていました。小さなグループで発言していくので、誰に臆すること無く自分の意見を出していたと思います。
積極的に意見を書き、他の意見を読み、そこから新しい意見が出てきて、深いところまで突き詰めて話しあえていたのではないでしょうか。
欠点があってもその方法を選択するのか?より良い方法はないのか?という疑問や探究心、外へ目を向ける子供の姿勢を見ることが出来たと思います。
最後に、高レベル放射性廃棄物の授業を有意義な授業にするためには、放射線に関する基礎的な知識が必要です。放射線のリスクを知らずに、高レベル放射性廃棄物の処分問題を考えることは出来ません。学校によっては2校時続けて時間をとることは難しいかもしれません。2日に分けても良いと思いますので、放射線リスクの授業とセットでお考えになられてはいかがでしょうか。