高レベル放射性廃棄物を題材とした授業研究

2020年度は、昨年度に引き続き、「社会的課題の一つとしての高レベル放射性廃棄物の処分問題」を学校の授業で扱っていただくことを目的に、授業研究(学習指導案作成、教材開発等)に係る教育関係者による自発的な活動を支援しました。

※新型コロナウイルス感染症の拡大により活動が制限された状況下でしたが、各研究会ではオンラインの活用や会合時間の短縮などに配慮しながら活動いただきました。

地域 研究会名をクリックすると活動報告が表示されます
北海道
北海道大学エネルギー教育研究会では、これまでの研究・実践をふまえ義務教育段階で電源選択の議論ができる基礎知識の学習が必要と考え、原子力発電、高レベル放射性廃棄物の地層処分、放射線についてもどのように学習を積み重ねていくか指導案の研究を進めてきています。
今年度はこれまで進めてきた地層処分を学ぶ基礎知識としての粘土の働きに着目した地下のつくりと環境の学習について6単元の学習指導案と授業資料からなる冊子、CD『エネルギー選択を考える素地づくりⅠ』として取りまとめました。引き続き授業実践を進めるとともに、指導案集『Ⅱ』を作成することとしています。またオンラインを活用し全道各地の教員との交流も積極的に進めたいと考えています。
東北
技術教育研究所では、弘前市を中心とする理科、技術科の教員による授業研究、情報交換を図ってきていますが、昨年度から高レベル放射性廃棄物の処分問題をテーマに加え、水産高校の専門科目での地下資源の学習に関連づけての授業案、教材作成を行い授業実践につなげました。
今年度は、水産高校での取組みを拡充するとともに、公開講座を開催するなどより発展させることができ、引き続き他地域との連携も視野に入れ取組みを展開していくこととしています。また大学でのエネルギー教育への協力を積極的に進め、問題意識の共有を図っていきたいと考えています。
東北
仙台エネルギー環境教育推進研究会では、従来から発電方法のメリット、デメリットの学習から高レベル放射性廃棄物の地層処分を取り上げ、それらの学習をもとに2030年のエネルギーミックスを考える流れで授業展開に取り組んでいます。
これまでの小学校での実践で教育的価値の観点からも有効性が明らかなので、引き続き小学校での実践展開に向け教材の拡充を検討していくこととしています。さらにはメンバーの拡大を図りつつ、より取り組みやすい指導案づくり、また中学校での取組みについても具体策を検討し、授業実践の拡充を進めていくこととしています。
関東
エネルギー環境教育を推進する会は東京都の中学校、高校の理科教員のグループで、エネルギー環境教育や放射線教育における個々の取組みを結集し、より多くの教員への働きかけを進めるべく活動を展開しています。とくに中学校と高校の学習の連続を意識した指導計画づくりを目指しています。
今年度は関連施設の見学や学会等への参加を通じて、授業に活かせる情報の収集を図るとともに、高校1年生の放射線に関するイメージや知識を把握するためのアンケート調査を行いました。これらをふまえ月例の研究会において指導案を検討し、実践に結びつけました。引き続き検証を行いつつ、他地域の研究会等とも交流し、より実現可能な授業案を提案していきたいと考えています。
関東
KAWASAKI CSTsは川崎市の理科教員で構成するグループで、SDGs、Society5.0に対応する人材育成を目指す観点から、新しい教育課程で拡充される放射線についての授業の質的向上を目指し、さらにその発展的な学習として高レベル放射性廃棄物の処分問題を取り上げていくこととしています。
前年度は放射線の簡易観察キットを作成し市内全中学校へ配布しましたが、今年度はキットを使っての指導案、授業プリントを作成、配布し、授業環境づくりを行いました。また若手教員を中心に研修会を行い、授業実践に結びつけることができました。今後も研修会などを通じて継続的、発展的な放射線教育の展開を図ることとしています。
中部
静岡エネルギー環境教育研究会では「『Society5.0』へ向けた教材・授業開発~新学習指導要領“現代的な諸課題”としてのエネルギー環境問題に焦点を当て、その教材化と授業実践研究~」をテーマに研究活動を進めています。今年度は小・中学校社会科における高レベル放射性廃棄物の処分問題の取り扱いにおける授業づくりの視点から、発達段階をふまえた系統的指導について検討を重ね「指導系統表概要」として取りまとめることができました。
引き続き実践を重ね系統の検証を行いつつ、教材のあり方や授業方法について検討を深めたいと考えています。また今年度実施の青森県六ヶ所村原子燃料サイクル施設等の視察に続き、北海道幌延深地層研究センターの視察を行い教材開発につなげていきたいとしています。
中部
三重県理科・エネルギー教育研究会では、継続的に「自分ごととして考える」ことをテーマの中心におき高レベル放射性廃棄物の地層処分の教材開発、授業実践に取り組んできていますが、今年度はコロナ禍のもと次の展開への準備期間と位置づけ、新学習指導要領をふまえこれまでの教材の見直しに向けて研修、研究を進めるとともに、またより多くの学校での実践に向けての検討会を行い実践の契機を作ってきました。
引き続き教材の改訂を進めつつ、地層の学習、放射線の実験など学習の流れを拡充し、中学校、高校での実践の輪を広げていきたいと考えています。
北陸
とやまエネルギー教育授業研究会では、深い学びを実現するための授業改善を目指し、エネルギー環境教育に視点をあてた活動を進めています。とくに中学校社会科、理科、技術・家庭科等の教科横断型の教育課程「クロスカリキュラム環境」の単元づくりに取り組んでおり、今年度は異教科TT、異教科授業活用、合科授業の3つのアプローチから高レベル放射性廃棄物の処分問題を含む授業実践を行いました。
今後は小学校のメンバーも拡充しつつ、小中一貫教育の視点から9年間を見通したクロスカリキュラムによる授業実践、高レベル放射性廃棄物の処分問題のより深い取扱いと基本教材の活用を進めていくこととし、SDGsとも関連づけながらの研究を深めていくこととしています。
関西
エネルギー環境教育関西ワークショップでは、SDGsを基盤にすえエネルギー環境教育の普及に取り組んでいますが、高レベル放射性廃棄物の処分問題は、エネルギー問題についての学習では必須の事項と位置づけ、また新学習指導要領に照らしふさわしい題材であることから積極的な取組みを行っています。
今年度は年間9回の研究会を行いましたが、とくに10月には「エネルギー安定供給の視点をどのように授業で伝えるか」をテーマにシンポジウムを開催し、内容をブックレットに取りまとめました。また例年行っている12月開催の「高レベル放射性廃棄物地層処分に関する教育セミナー」ではNUMOから最新情報を得るとともに基本教材について授業での使いやすさの視点から検討を行いました。
関西
かこがわクラブは市内近郊の教員により構成され、月1回程度の定例会はじめ他の研究会への参加や視察などの活動を展開しています。今年度は青森県六ヶ所村のエネルギー関係施設等の視察を行うとともに、定例会ではメンバーの授業づくりの情報交換を行いました。あらためて実際の現場を見ることの重要性を再確認し、引き続き様々な施設見学を行いたいと考えています。
こうした活動を中学校社会科、理科での授業に結びつけることができましたが、とくに特別支援学校でのエネルギー教育カリキュラムを作成し実践したことは今後につながる成果となりました。
今後はメンバーの拡充を図り、GIGAスクール構想に基づく授業づくりやデジタル教科書の活用を研究しつつ、より多くの授業展開につながるよう活動を展開することとしています。
中国
広島大学エネルギー環境教育研究会では、これまで小学校から高校につながる理科におけるエネルギー環境教育のカリキュラムの系統化を進めてきましたが、今年度は新教育課程に即した見直しと授業プランの検討を進め「エネルギー教育のための小中高連携カリキュラム」の小学校版を作成しました。
この一環として高レベル放射性廃棄物の処分問題についても系統性を意識しつつ小中高段階での授業実践を進めました。なかでも昨年度取り組んだ中学校社会科と理科の連携学習についてはさらに取組みを重ね、カリキュラムマネジメントの方向性を探りました。
引き続き連携カリキュラムの中学校版を完成させるとともに、小学校段階においてもカリキュラムマネジメントによる教科連携による高レベル放射性廃棄物の授業づくりを進めることとしています。
中国
山陰エネルギー環境教育研究会では、従来から原子力発電所の立地自治体を拠点とする研究会として放射線教育に注力をしてきており、さらにその発展として高レベル放射性廃棄物の地層処分をテーマとする授業づくりにも取り組んでいます。年度を通じて授業、科学教室などによりエネルギーや放射線に関する多くの学習を展開していますが、とくに今年度は中学校新課程に対応する教材とカリキュラムの開発を進め、授業実践を通じて検証を行っています。
また地層処分についても教員勉強会を開催し最新情報の収集を図ったほか、小学校でも出前授業により初めて授業実践ができました。引き続き継続的な授業実践に結びつけるためにも、会員の拡大に向け取り組むこととしています。
九州
九州地区エネルギー環境教育実践研究会では鹿児島県の教員を中心に「小学校部会」と「社会科を元気にする会」の2部会を設け小中高の教員がエネルギー環境教育の実践に向けた授業研究の活動を展開しています。その一環として高レベル放射性廃棄物の処分問題の授業化に取組み、教材研究や授業実践を積み重ねてきています。
今年度は新教育課程に対応するエネルギー環境教育のあり方の検討を中心に、勉強会やリモート会議を通じて情報の収集、交換を行っていますが、コロナ禍の中、当初計画していた見学会や九州内外の他の研究会や教員との交流は次年度へ持ち越しとなりました。
今後は勉強会や見学会に加え、デジタル化に対応する教材の検討、ネットワークの拡充を進めていきたいと考えています。
沖縄
沖縄エネルギー環境教育研究会では、従来から地域特性に応じた教材開発、出前授業など積極的にエネルギー環境教育に取組み、なかでも離島におけるエネルギー問題の理解に向けた教材開発や授業実践には力を入れているところです。
また、高レベル放射性廃棄物の処分問題については、次代を担う生徒が持続可能な社会の実現に向けて科学的に判断する力を育むための有効なテーマとして位置づけ取り組んでいます。とくに従来から取り組んでいる『「誰がなぜゲーム」で考える地層処分問題』の授業展開については、高校へも対象を広げ実践を重ねつつ、より使いやすく教材の見直しを図ってきました。あわせてフォローアップ調査を通じて効果の確認を行っており、より多くの実施につながるよう県外も含め情報発信、交流を計画しています。
全国 エネルギー環境教育「全国研修会」