iRONNA掲載「核のごみの地層処分「安全神話」よりもリスクを語れ!」について
ウェブサイト「iRONNA」に掲載されている「核のごみの地層処分「安全神話」よりもリスクを語れ!」に関する当機構の見解は以下のとおりです。
『「地層処分は安全」とだけ強調した広報は、安全性をないがしろにする姿勢である』(1ページ下段)とのご指摘、これがまさに「安全神話」だとのご指摘だと思いますが、福島第一原子力発電所の事故以降、「安全に絶対はない」は、我々原子力に係わる者皆が再認識したことです。NUMOは、人と環境に与えるリスクを十分小さくすることを目標に、火山活動や断層活動によって地下施設が破壊される可能性がある場所や、隆起・侵食により人間と廃棄物とが接近する可能性がある場所は避けた上で、候補地が地層処分に適した地質環境かどうかを調査により把握し、その地点の地質環境特性に応じた施設の設計を行い、長期の安全性を評価します。その際には、万一の事態が発生した場合の被害の大きさも評価します。その結果、候補地で「地層処分にはどのようなリスクがあるのか。それがどういったレベルにあるか」をお示しして対話を重ねることにしています。そこで立地を進めることに同意が得られなければ、その候補地は断念することになります。また、そのことは原子力規制委員会によって最終的に確認されます。したがって、どこでも安全な地層処分が可能だとは考えていませんし、そのためには慎重な調査と安全性の評価が不可欠だと考えています。
避けるべき活断層について、『「わかっている活断層さえ避ければ大丈夫」といった言い方で安全性が強調されてきた』(2ページ中段)との印象をもたれたとのことですが、活断層に対する我々の認識は、「すべての活断層の場所が現状すでにわかっているわけではなく、存在が知られていない活断層があるかもしれないとの前提で、処分地の選定調査の段階では物理探査(人工的に震動を与えて地下の状況を把握する調査手法)やトレンチ調査(地面を掘削し断層の活動時期等を直接観察)などを用いた詳細な調査を実施し、隠れた活断層がないかどうか確認すると共に、候補地の近くに活断層があればその断層の影響範囲もしっかり調査で把握し、影響範囲も含めて活断層を避けることが必要」と考えています。
また、『マグニチュード7弱程度の規模の地震では、過去に起きたときには断層が地表まで達していなくても、将来、処分場の深さまで断層が届くように地震が起きる可能性はある』(2ページ中段)とのご指摘についてですが、現状、地表で確認されておらず、地下のかなりの深い場所に存在する断層が動いて破断が処分場を直撃する可能性を完全に排除することはできないため、こうした発生の可能性が低い現象についても、どの程度の影響になるかを評価しています。
『将来の人類の被ばく線量は、放射性物質が処分場からどれだけ漏れ、そのうちのどれだけが地表付近に届き、その地域の住民が生活環境に広がった放射性物質をどれだけ摂取するかといった要因すべてが組み合わさって決まる。これらの要因に影響を与える地質環境などの条件の組み合わせには無数のパターンがあり、現実にそのうちのどれが起きるのかを予測することは不可能である』(3ページ上段)とのご指摘も基本的にはその通りで、将来起こることを正確に言い当てることは不可能です。しかし、地下深部や地層処分施設で生じる可能性のある現象を網羅的に洗い出し、起こりやすい現象、稀にしか起こりそうにない現象に分類した上で、厳し目に考えてもこの程度という評価は可能だと考えています。不確実な現象については、厳し目の結果が出るようにそれぞれの条件を設定するなどして評価することによって、厳し目に考えてどの程度の影響が生じるかを評価できますので、現実にどの組合せが起きるのかを予測できなくても、将来においてどの程度のリスクをもたらすものであるかを示すことは可能だと考えています。
最後に、『仮にギリギリであったとしても、反対運動を利することは言わないとばかりに、そうした本音は語られないであろう。このような姿勢では、社会が安全を確信することは難しい。』(4ページ中段)とのご指摘に関しては、我々自身が地層処分の実施主体として、社会の信頼を得ることなくしてこの事業は実施できない事を絶えず自戒していると申し上げたいと思います。地層処分事業は、100年以上の長期にわたる事業です。我々NUMOは、安全性を最優先に事業に関する情報を積極的に公開し、分かりやすく説明していく所存ですが、事業が長期間に及ぶために組織としてのモラルの維持・継続が最大の課題であると考えています。将来、都合の悪い事実を隠すような組織とならないためにも、今から襟を正し、皆さまの声を真摯に受け止め、社会から信頼される組織であり続けることが、地層処分事業を進めるうえで最も大切なことだと考えています。
以 上