ワークショップの参加メンバー
地層処分では数万年以上先を見据えた『人工バリア』を設計しています。「そのような遠い将来をどうやって知ることができるのか」と思われるかもしれません。その解決方法として、地層処分で考えられる様々な現象に非常によく似た自然現象(ナチュラルアナログ)を研究することで、地層処分の将来像を推定するためのヒントを得る、即ち『自然に学ぶ』という方法があります。
このようなナチュラルアナログ研究には、日本だけでなく世界各国の地層処分事業の実施主体が取り組んでいます。今年5月には、クロアチアで開催されたナチュラルアナログに関する国際ワークショップにNUMOの職員が出席し、約13の国々の研究者と3日間にわたり最新の研究成果について意見交換しました。例えば、フィンランド、英国及び日本からは、人工バリアの長期健全性を示すために、遺跡から出土した鉄くぎや鉄剣などが数千年にわたり土中に保持されているといった事例などの情報収集に体系的に取り組んでいることを報告しました。出席者より、「このような取り組みは、これから地層処分の安全性を示そうとしている国にとって良い手本となる」といった意見がありました。
ワークショップで講演するNUMO技術部課長鈴木
古代コンクリートが使われている、ローマ時代の遺構
NUMOは新たなナチュラルアナログの開発にも取り組んでいます。NUMOと北海道大学は合同研究チームとして、スウェーデン・キルナ鉱山のベントナイトを対象とした国際共同研究プロジェクトに参加しました。現地の鉱山会社(LKAB社)の協力を得て現地調査を行い、深さ約1,000mのトンネルから約3億年以上前に生成されたと推定されるベントナイトの試料を採取しました。3億年というと、恐竜が繁栄するよりもはるか昔の時代であり、この頃に生成したベントナイトが現在でも膨潤性などの特徴を維持した状態で残り続けていることが分かり、地層処分の長期健全性を示す重要な成果となりました。
NUMOでは引き続き、関連する機関と連携して、地層処分の実現に向けて取り組んでまいります。
左:北海道大学-NUMO合同研究チームのメンバー/右上:スウェーデンのキルナ鉱山/右下:ベントナイトの採取個所(白色~灰色部分)
共同研究で採取した約3億年前のベントナイトを手に
技術部 工学技術グループ 課長
鈴木 覚
ナチュラルアナログを地層処分の安全性を示す根拠とするための国際的な協力が、この10年ほどで大きく進んでいます。今回、国際的なナチュラルアナログの研究プロジェクトに携わることができ、科学技術者として“やりがい”を感じています。研究成果を、日本だけでなく世界の地層処分事業にも役立てられるよう、今後も、北海道大学をはじめ海外の機関とも協力して取り組んでいきたいです。
謝辞
本記事の一部は、北海道大学工学部佐藤研究室とNUMOの共同研究の成果を含みます。 本研究はKiNa国際共同研究プロジェクト及びLKAB社(スウェーデン)の協力で実施しました。関係者の方に深く感謝いたします。