事業計画

国の「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」および「特定放射性廃棄物の最終処分に関する計画」を基本に、2005(平成17)事業年度における原子力発電環境整備機構の事業計画を以下のとおり定める。

原子力発電環境整備機構は、2001年10月に概要調査地区等の選定手順を公表し、「概要調査地区の選定は平成10年代後半を目途とする」こととした。 2002年12月には全国の市町村を対象に「高レベル放射性廃棄物の最終処分施設の設置可能性を調査する区域」(以下、応募区域)の公募を開始し、応募に向けた、広聴・広報を基本とする理解活動および概要調査地区選定に必要な技術基盤の整備等に取り組んできた。

2005(平成17)事業年度は、広聴・広報を基本とする理解活動を通じて、広く一般の方々の意見を聴き、最終処分事業に反映するよう努める。これによりさらに理解を促進し、複数地点の応募を得た上で、応募区域およびその周辺の地域における協力を得つつ、文献調査を着実に行っていく。

併せて、応募を得るための全国的な理解活動や、最終処分事業に必要となる技術開発等を引き続き行っていく。

なお、応募の状況によって業務の見直し等が必要な場合には、適切かつ柔軟に対応していくこととする。

I 概要調査地区等の選定

概要調査地区の選定を的確に進めるため、応募区域およびその周辺の地域に関する文献調査を計画に基づいて実施する。また、応募区域に対応した処分場概念等を検討していく。

1.文献調査の実施

  1. (1) 文献調査計画の策定

    文献調査に先立ち、調査する期間、収集すべき文献の種類や文献の収集方法等を取りまとめた「文献調査計画書」(仮称)を作成し、公表する。

  2. (2) 文献情報の収集・整理

    「概要調査地区選定上の考慮事項」を基に概要調査地区としての適性評価に必要な文献等を収集し、情報を抽出・整理する。なお、情報・データを管理する地質環境データ管理システムおよび地理情報システム(GIS)は、引き続き整備・拡充を図る。

  3. (3) 地質環境特性の分析・評価

    「概要調査地区選定上の考慮事項」に示した評価の考え方に基づき、文献情報の分析・評価を実施する。分析・評価にあたっては、既存の評価技術やこれまで開発を進めてきたデータ評価手法等を活用する。

    なお、文献情報の品質や信頼性は、外部の専門家を交えて評価することで、客観性・透明性を確保し、文献の分析・評価の結果等は、出典・検討経緯を含めてデータベースに整理する。

2.応募区域に対応した処分場概念等の検討

概要調査地区の選定に資するため、文献調査によって得られる情報に基づき、設計・性能評価に必要となる地質環境特性を検討するとともに、応募区域の条件に対応した処分場概念を検討する。また、次段階である概要調査の計画立案のため、応募区域における調査の進め方等について検討する。

さらに、応募区域における環境保全策や自主的な環境影響調査・評価の計画を検討するため、応募区域およびその周辺の地域における環境の現況や規制に関する情報を調査する。

II 最終処分に関する理解活動

全国を対象とした広聴・広報を基本とする理解活動により応募を促進することに努める。

また、応募をいただいた後も、わが国における最終処分事業の重要性に対する理解、および応募市町村に対する理解が得られるよう、全国的な理解活動を継続していく。

さらに、応募市町村との信頼関係の維持・向上ならびに周辺地域からの理解・協力が不可欠であり、このため地域住民の方々との様々な交流を通じて意見交換の機会を設け、いただいた意見を最終処分事業に反映するよう努めていく。

1.応募促進に向けた全国的な理解活動

  1. (1) マスメディア等を活用した広報活動

    最終処分事業への理解を深めるため、新聞、テレビ、雑誌等のマスメディアを活用した広報活動を引き続き実施するとともに、関係施設見学会等を適宜開催する。

    また、活動状況等について、全国の市町村をはじめとする関係者へ情報提供を行うため、定期刊行物「NUMO-NOTE」の発行を継続する。

  2. (2) 直接対話による理解活動

    最終処分事業への理解を地域に拡げていくため、全国各地において座談会の開催を継続し、地域の住民、専門家やオピニオンリーダー等を交えたディスカッションを行い、事業活動に反映するとともに、その結果を紙面での紹介を通じて広く周知する。

    なお、これらの理解活動を効果的に進めるため、広報素材の充実に努める。

  3. (3) 応募促進に向けた理解活動

    地域の住民に、最終処分事業の必要性、安全性や地域共生についてご理解をいただき、応募の獲得に繋げるため、最終処分事業に対する問い合わせへの対応や事業概要の説明、関係施設見学会の開催など、応募促進に向けた活動を実施する。

2.応募市町村やその周辺の地域における理解活動

  1. (1) 適時適切な情報等の提供

    応募市町村やその周辺の地域における、地域の住民、県、各議会および諸団体等の理解促進・関係強化を図る拠点として、応募市町村に連絡事務所を設置するとともに、説明会を開催することなどにより、文献調査に関する情報等を適時適切に提供する。

  2. (2) 理解促進およびコミュニケーション活動

    応募市町村やその周辺の地域において、最終処分事業へのより一層の理解促進を図るため、関係施設見学会を開催するとともに、地域との良好な関係を構築するため、地域のイベント共催等のコミュニケーション活動を実施し、地域の住民との対話とふれあいの輪を広げていく。

  3. (3) 地域共生に向けた活動

    応募市町村やその周辺の地域との望ましい地域共生を築いていくため、地域の住民が進めるまちづくり等に参画し、地域の一員としてその発展に協力する。その一環として、まちづくりの一助となるような地域共生事例の提供を行うため、参考となる事例の調査・収集・整理を行う。

  4. (4) 地元マスメディアの活用や直接対話による理解活動

    応募市町村やその周辺の地域において、最終処分事業に対する理解を促進するため、新聞、テレビ、ミニコミ誌等の地元マスメディアを活用し、きめ細かい情報提供を実施する。また、座談会やフォーラムの開催により、地域の住民、専門家やオピニオンリーダー等を交えたディスカッションを行い、事業活動に反映するとともに、その結果を紙面での紹介を通じて広く周知する。

3.情報公開制度およびホームページによる情報提供

  1. (1) 情報公開制度の適切な運用

    情報公開規程に基づき、情報公開請求に適切に対応するとともに、その運用について一層の充実に努める。

  2. (2) ホームページによる情報提供

    事業の透明性を確保するため、文献調査に関する情報や各種委員会資料等をホームページ上に迅速に掲載するとともに、すべての閲覧者が見やすく、分かりやすい構成とする等、内容の充実に努め、積極的な情報提供を行う。

III 最終処分に関する技術開発等

概要調査地区選定に必要な技術の整備を行うとともに、長期にわたる最終処分事業を的確かつ効率的に推進するため、長期的展望に立った技術の開発を継続する。

また、技術情報に関して、より一層の信頼を確保するため、品質保証活動に取り組む。

1.概要調査地区選定に必要な技術の整備

  1. (1) 概要調査地区選定に関わる評価手法の体系化

    概要調査地区の選定を的確に進めるため、選定に係わる作業を計画的かつ効率的に実施する体系的管理方法の整備を継続する。また、概要調査地区を選定するため、技術情報に基づく意思決定の支援手法等の検討を継続する。

  2. (2) 安全確保の自主基準、信頼構築方策の検討

    最終処分事業の安全性を確保するためには、将来、国によって定められる安全基準を遵守することはもとより、現段階においても実施主体自らの責任において安全確保のための技術的な目標や基本的な考え方を策定しておくことが重要である。

    このため、最終処分の安全確保に関する諸外国あるいは他廃棄物等における先行例の調査研究や、情報の収集・評価およびデータベースの整備を継続し、処分場の安全性に関する実施主体としての自主基準を引き続き検討する。

    また、最終処分事業を推進するため、技術的安全方策について社会的理解の促進方策を具体的に検討する。

2.次段階の計画を進めるための技術開発

  1. (1) 精密調査地区選定において考慮すべき事項および概要調査手法の体系化の検討

    概要調査を円滑に進めるため、精密調査地区選定において考慮すべき事項の検討を進めるとともに、必要なデータ等を取得する概要調査手法の体系化についても検討を行う。

  2. (2) 概要調査技術・評価手法の開発・実証

    概要調査における地質環境の長期安定性、地質環境特性の評価手法の開発を進める。また、概要調査技術を管理する技術・手法等の検討を行うとともに、調査技術の実証を計画・推進する。

  3. (3) 概要調査に対応する処分場の設計・性能評価手法の開発

    概要調査結果を基に処分場の概念設計やその性能評価を行うため、地上・地下施設の設計・建設、人工バリアの設計・製作および処分場の建設・操業・閉鎖に関する要素技術について、既存技術の適用性検討を基に成立性や実現性の検討を行い、必要な手法を開発するとともに、処分場の概念設計や性能評価を行うための体系を整備・充実する。

3.技術情報の品質確保と品質保証体系の整備・運用

技術情報の客観性・中立性を担保するため、技術アドバイザリー委員会等において、技術的業務の品質について助言を受けるとともに、技術情報の信頼性を確保するため、品質マネジメントシステムを適切に運用し、引き続き改善する。

IV 最終処分に関する技術協力

概要調査地区の選定や概要調査以降に必要な技術を的確かつ効率的に整備していくため、国内外の技術開発成果を適切に取り込んでいく。

1.国内関係機関との技術協力

これまでに協力協定を締結した核燃料サイクル開発機構および電力中央研究所ならびにその他の国内関係機関との間で、地質環境評価、地層処分の工学技術、安全評価等に関する技術情報の交換、共同研究等を引き続き実施する。

2.海外関係機関との技術協力

地層処分に関する技術は国際的に共有できるものも多いことから、これまでに協力協定を締結している実施主体等との間で、地質環境評価、地層処分の工学技術、安全評価等に関する情報交換、共同研究等の技術協力を引き続き実施する。

3.国際機関等との協力

放射性物質環境安全処分国際協会(EDRAM)において、実施主体間における積極的な情報交換を行う。

国際原子力機関(IAEA)および経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)等が進める国際共同プロジェクトに積極的に参画し、最終処分事業の円滑な実施に資する。

V 拠出金の徴収

「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」第11条の規定により、発電用原子炉設置者から拠出金を徴収する。