2018(平成30)事業年度 事業計画
事業計画
「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針(平成27年5月閣議決定)」(以下、「基本方針」という。)、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する計画(平成20年3月閣議決定)」(以下、「処分計画」という。)及び原子力発電環境整備機構(以下、「機構」という。)の「特定放射性廃棄物の最終処分の実施に関する計画(平成20年4月策定)」(以下、「実施計画」という。)を基に、2018(平成30)事業年度における機構の事業計画を以下のとおり定める。
なお、今後「処分計画」が改定された際には、機構の「実施計画」を変更するとともに、本計画についても見直しを行う。
【機構事業を取り巻く状況】
国による科学的特性マップ(以下、「マップ」という。)の提示(2017年7月)は全国において概ね冷静に受け止められており、今後は一層きめ細かな対話活動が重要となっている。
最終処分関係閣僚会議(7月)においては、マップ提示後の取組みとして「地域特性を踏まえた重点的活動」、「地域の検討を社会全体で支える環境づくり」等、大都市部も含めた全国的な対話活動を積み重ねながら、地域に目を向けた活動にも取り組んでいくことの重要性が謳われている。また、技術開発に関しては、「研究開発の推進と体制強化」(研究開発成果の継承、技術マネジメント能力の向上、人材育成)、「各国共通課題の解決に向けた国際的な連携、貢献」等、関係機関との連携・協力の基に機構がリーダーシップを持って取り組むべき諸課題が提示されている。
【2017年度の事業活動】
1.意見交換会の参加者募集に関する事案と再発防止等に向けた取組み
マップの提示後、国と機構は9月から全国9ブロックで自治体説明会を実施し、10月からは全国の都道府県庁所在地において「科学的特性マップに関する意見交換会」(以下、「意見交換会」という。)を開始した。これに関し、11月、参加者募集の委託業務等において不適切な取扱いが行われていたこと(以下、「事案」という。)が判明したため、評議員会に調査チームを設置し事実関係の究明と再発防止策の検討をしていただいた。
評議員会からは、
- 地層処分事業においては事業遂行の各過程において常に公正性と信頼性が確保される必要があるところ、業務委託のあり方に問題が存在したのみならず、リスクマネジメント体制が不十分であることから、多様なリスクを予見し組織としてその顕在化を未然防止する仕組み等を強化する必要があること
- 意見交換会においてはその趣旨目的に照らして適切な設計や運営がきめ細かく検討されるべきであったところ、ともすれば供給者目線に偏っていることから、活動目的の明確化と参加される方々の目線に立った創意工夫を行い、対話活動のあり方を改革していく必要があること
等が指摘され、「再発防止の徹底」、「対話活動の改革」、「組織改革と人材育成」の三点からなる「再発の防止及び組織の改革に向けた提言」をいただいた。
この提言を踏まえて、機構は「リスク管理室」を設置するとともに、「業務委託を含む業務におけるリスク管理」、「説明会等のルールの整備及び試行」、「対話活動改革チームの設置」、「報告・連絡・相談の文書化・共有化の徹底」及び「組織改革と人材育成(中長期的な取組み)」からなる再発防止に係る取組みを取りまとめ(2018年1月)、これらを可及的速やかに実施してきている。
2.対話活動の多様な展開
マップの提示後、新たに作成したパンフレット(「知ってほしい、地層処分」)と理事長名による挨拶文を全国の自治体等へ送付し、マップの意義や地層処分事業等に関し広く情報提供を行った。
また、マップの提示前後に、国による自治体説明会に説明者として参加するとともに、広く参加者を募集して全国各地でシンポジウム、意見交換会を国と共催し、マップの位置づけや要件・基準、地層処分の意義と安全確保の考え方、今後の対話活動の進め方等を説明して、社会のみなさまの関心とご理解の醸成に努めた。
特に意見交換会では、地層処分セミナー(2016年度)の経験を活かして少人数による双方向対話を充実させ、参加者の様々な関心や質問に丁寧に回答した。また、毎回、開催結果を機構関係者で情報共有し、運営等の改善と対話力の向上に努めた。しかしながら1に述べた事案により意見交換会はいったんリセットし、再発防止に向けてこれまでの取組みを反省して、開催趣旨や目的の明確化、会合の公正性を確保するための運営ルールの策定、参加される方々のニーズ・目線の重視や「手作り・直営実施」を基本とする運営方法の再検討等を行った。そして、これらの見直し策を反映した会合として対話型全国説明会を試行してその妥当性を検証する等、再開に向けて準備を進めた。
その他の対話活動としては、意見交換会等と連動した地方新聞社や大学、地域団体等への訪問、複数の新聞(オンライン版を含む)を組み合わせた広告による社会各層への情報提供、地層処分模型展示車の巡回、地域における勉強会の支援、WebメディアやSNSメディアを活用した広報、教育関係者ワークショップ、大学等への「出前授業」、夏休みの親子見学会の開催、大学のディベート授業への協力、報道関係者等との勉強会や懇談会の開催等に取り組み、地層処分の重要性や安全確保策及びそのリスクについて、幅広く情報提供を行った。
また、これらの活動を更に充実させるためのマネジメントに関しては、中期事業目標に基づく「対話活動計画」の策定、2016年度の対話活動成果の自己評価と評議員会による評価・提言を踏まえた活動目標の設定、対話活動の実施結果の迅速な公表と事後広報の実施、対話活動要員の人材育成(個別テーマごとに知識と理解を深める知識向上研修会等)等に取り組んだ。
これらに加え、事案の再発防止と対話活動改革の取組みとして「対話活動改革チーム」(若手職員を含む部門横断チーム)を設置し(2018年1月)、これまでの対話活動を振り返り、その課題点の分析・評価を行うとともに、外部専門家の助言や類似公益事業における事例等を参考に検討を重ね、IT・インターネットの双方向通信機能を活用した新たな取組みに挑戦すべき等の提言を取りまとめた。これらの検討結果を踏まえ、新たな対話活動に係るアクションプランを策定し、今後の活動に反映することとした。
3.技術開発の着実な進展
地層処分技術の信頼性の向上を目指して2014年度より作成に取り組んできた「包括的技術報告書」については、公表に向けて追加検討等を行い、内容を更に充実させるとともに、関連する技術開発成果の学会発表・論文発表を積極的に行い、関係学会等の専門家との情報交流に努めた。
また、「地層処分事業の技術開発計画」(「中期技術開発計画(2013年度~2017年度)」)に基づき、我が国における地質環境特性の調査・評価、人工バリアの設計・施工技術等の工学的対策及び閉鎖後の長期安全性評価等に関する技術開発に取り組んだ。
更に、2018年度以降の技術開発計画に関しては、「包括的技術報告書」の作成過程で得られた知見を基に今後実施すべき技術開発課題等を整理し、国による地層処分研究開発調整会議等において報告した。同会議では、機構のリーダーシップのもと、関係機関と協議・調整しながら地層処分技術開発に関する全体的な計画(以下、「全体的な計画」という。)の策定を進めた。また、これを踏まえて機構の新たな「中期技術開発計画(2018年度~2022年度)」の策定に取り組んだ。
技術マネジメントに関しては、業務全般、とりわけ委託業務や地質環境調査・評価に係る品質保証活動の充実に努める一方、2016年度の技術開発成果に対する評議員会による評価・提言、技術開発アドバイザリー委員会等からの助言を得て、地層処分技術の品質と信頼性の更なる向上を図った。また事案の再発防止の取組みとして委託業務管理の一層の強化に努めた。
更に、人材育成に関しては、国内外の関係機関等との共同研究や国際共同プロジェクトへの参画を通じて取組みの強化を図るとともに、対話活動へも積極的に参加して技術系職員の対話力の研鑽に努めた。
4.組織運営の更なる強化
「中期事業目標」を実現するための各種計画(「対話活動計画」、「中期技術開発計画」、「中期人材確保・育成方針」)を検討し策定作業を進めたほか、理事会の定期的な開催、評議員会による評価・提言の事業実施への速やかな反映、機構自身による自己点検の実施、内部監査の実施、リスクマネジメント活動の定着化、労働時間管理の適正化等に係るコンプライアンスの徹底、サイバー攻撃への対応に係る情報セキュリティ対策の強化等、様々な施策を通じてガバナンスの一層の強化に努めた。
また、新卒者採用(3名)や出向者のプロパー化(2名)等により人材確保を着実に進めるとともに、部門別の長期的な人材育成計画である「目指すべき人材像と部門別育成計画」を策定したほか、eラーニングの導入や自己啓発支援の拡充を進めた。
更に、コスト低減を意識した取組み(業務効率化ワーキンググループの活動)や一者応札を改善する取組み(事業説明会の開催)を行ったほか、ワークライフバランスを意識した働きやすい職場環境作り(時間外労働管理の見える化、等)を進めた。
これらに加え、事案への対応として報道業務を地域交流部から総務部へ移管した(12月)。また再発防止の取組みとして理事長直属の「リスク管理室」を新設し(1月)、機構内のリスクマネジメント状況に関するヒアリング及びベンチマークとなる他機関のリスクマネジメントに関するヒアリングを行うとともに外部専門家の助言等を得て、リスクマネジメントの強化策を検討した。また、これらに伴い組織権限規程を改定した。
更に、委託業務基準や各種契約書式等に係る内規類を改定して委託先及び再委託先の業務実施状況を管理する仕組みを整備した。また、職員のプロパー比率や中長期的に実施していく海外実施主体等との人材交流、専門能力を有する職員の採用等に関しては「中期人材確保・育成方針」へ反映して着実に取り組んでいくこととした。
【2018年度の事業実施方針】
これら2017年度の事業活動及び再発防止と組織改革の取組み及び評議員会による評価・提言を踏まえ、「中期事業目標」の実現に向けた2018年度における事業分野ごとの実施方針は次のとおりとする。
(対話活動)
対話型全国説明会等の全国主要都市における対話活動を積み重ねることにより、地層処分事業について、広く社会のみなさまの関心と理解を深めていく。また、Webメディア及びマスメディアの活用や各種イベントへの出展等により効率的に情報提供を行い、社会のみなさまの関心や疑問にお応えして信頼の回復に努めるとともにご理解を獲得していく。こうした活動により、地域における関心の高まりを社会全体で支援していただけるよう環境を整える。そのうえで、「グリーン沿岸部」地域を中心に、地域特性に応じて多様な説明会等を柔軟に開催し、一層きめ細く対話活動を実施することで、事業への関心喚起に努める。
あわせて、地域において行われる多様な学習活動等を支援して、事業に関するご理解を深めていただくとともに、その学習活動等を地域で広げていただけるよう、十分な情報提供、丁寧な対話、活動の支援を積み重ねていく。そうした取組みを通じて、複数の地域での文献調査の着手を目指す。
これらの活動に関しては、活動目的、運営ルール等を明確化したうえで、活動内容や運営方法等を具体的に設計する。設計に際しては、「対話活動改革チーム」の検討等を通じて、参加される方々のニーズ等を踏まえて創意工夫を行う。また、説明会等の運営に際しては機構の取組みを身近に感じ信頼感を持っていただけるよう「手作り・直営実施」を基本とし、業務委託は専門性及び費用対効果やリスク等を十分に考慮したうえ必要最小限の範囲で行い、委託先への業務管理や指導を徹底する。更に、職員自らの「顔の見える取組み」や双方向の対話が充実するよう、現場統括力、対話力、運営力を強化する。また、発電用原子炉設置者の協力及び支援を得る場合は、その役割や関与の仕方を必要の都度明確化する。こうしたきめ細かいマネジメントを通じて、各種の対話活動に公正性と信頼性を確保していく。
(技術開発)
文献調査の受け入れを検討していただくためには、機構の有する技術力を信頼していただくことが極めて重要である。そのため、「包括的技術報告書」の外部レビューを実施して一層の技術的信頼性を獲得するとともに、マップの活用、同「報告書」において検討してきた成果の効果的な活用、Q&Aデータベースの整備と拡充等を通じて、様々なステークホルダーに対し分かりやすく体系的に情報提供を行う。
また、地層処分技術の持続的な改善と向上を図り事業の基盤をより確実なものとするため、新たな「中期技術開発計画(2018年度~2022年度)」の策定を踏まえて、技術開発を計画的に進める。
これらの取組みに際しては、技術と人材のポートフォリオの管理を含む技術マネジメントを強化する。
また、これらと並行して、技術系職員の対話力の研鑽、若手職員に対する教育機会等の充実、現場業務の実体験を通じた現場実践力やプロジェクトマネジメントスキルの強化等の人材育成に取り組むとともに、概要調査の円滑な実施に向けた技術面の準備等に取り組む。また、これらの人材育成や技術力の強化を重点的な目的のひとつと位置づけて、国内外関係機関等との共同研究や情報交流等の技術連携の一層の充実にリーダーシップを持って取り組み、最新知見の導入や技術交流等を進める。
(組織運営)
長期にわたる事業期間を通じて社会から信頼される事業主体であり続けることを目指して、「コンプライアンスなくして仕事なし」という自覚と高い規範意識を持ち、公正かつ適切な事業運営を行う。そのため、理事会によるガバナンスを一層強化するとともに、「リスク管理室」を中心とする新たなリスクマネジメント活動を展開する。また、コンプライアンス研修等を定期的に実施する。更に、評議員会による評価・提言をはじめ、内部監査や部門横断のワーキンググループ活動等に基づき、事業活動の改善と効率化を絶えず進める。
また、「学習する組織」づくりを目指すとともに、役職員一丸となって業務遂行にあたるチーム意識の醸成と向上を図る。
人材確保に関しては、プロパー職員の増加、専門能力を有する職員の採用に取り組む。人材育成に関しては、各種の職員研修やOJTの実施内容の向上を図るとともに、各部における取組みが着実に効果を上げているか定期的に確認する。
また、情報公開規程に則って積極的な情報公開に取り組み、事業の透明性を確保することにより機構への信頼性を高めていく。
以上に述べた事業の推進に当たっては、機構の活動原資が電気料金であることを自覚し、常にコスト意識を高く持ち、効率的な業務遂行と適切な経費の削減に努める。
Ⅰ 地域特性を踏まえた多様な対話活動の実施
1.文献調査の受け入れと調査の着手を目指した対話活動の拡充
(1)地域における活動を社会全体で支える取組み
全国主要都市における対話型全国説明会等の対話活動を積み重ねることにより、これまで関心が薄かった層をはじめとする社会各層に向けて、地層処分の必要性やリスクとその安全確保策等に関し効率的に情報提供を行い、信頼の回復に努めるとともにご理解を獲得していく。具体的には、対話型全国説明会、Webメディア及びマスメディアの効果的活用、全国各地への地層処分模型展示車の巡回、各種講演会、「学習の機会提供事業」の実施等により広く社会へ情報提供を行う。
また、各地の大学等への「出前授業」、各種イベントへの出展、教育関係者等へのアプローチ、夏休み中のイベント開催等により次世代層へも情報提供を行う。
これらの情報提供の際には、IT・インターネットの双方向通信機能やヴァーチャルリアリティの技術の活用による新たな取組みも実施する。
更に、報道関係者はもとより、全国、地域のオピニオンリーダー層、技術士会ほか多様な分野の専門家や学会等へ適切に情報提供を行い、事業に関する正しいご理解の基に各種の情報発信をしていただくよう努める。
こうした取組みを通じて、地域における学習や検討を社会全体で支えていただけるよう環境を整える。
(2)地域特性を踏まえたきめ細かな対話活動
上記(1)による対話活動を積み重ねながら、「グリーン沿岸部」地域を中心に、地域特性に応じて、多様な説明会等(例えば、「対話型地域説明会(仮称)」等)を実施していく。これらの地域特性に応じた説明会等ではマップの位置づけ、要件・基準、事業が地域社会に与えるプラス面やマイナス面の影響等について地域のみなさまへ丁寧に説明し、事業に対する関心を高めていただく。あわせて、みなさまのご意見を伺い、疑問や関心等にお応えして、地域の将来ビジョンと事業との関わり等について考えていただけるよう努める。
関心を持っていただいた方々には重点的にフォロー対応を行い、機構としても地域のみなさまのニーズや地域社会情勢等に関して理解を深める。
また、自治体当局をはじめ地域の報道機関、経済団体、業界団体等へも情報提供を行い、地域のみなさまの関心に対応していただけるよう協力要請等を行う。
(3)地域の学習活動の拡充・深化の支援
勉強会や施設見学等に係る「学習の機会提供事業」を通じて、過年度の取組みにより地層処分事業に関心を持っていただいた団体や「グリーン沿岸部」地域で学習を希望する団体等に対し、団体のニーズや要望を踏まえつつ、きめ細かな学習活動支援を行う。
また、とりわけ上記(2)の会合やフォロー対応等により更に関心を深めていただいた方々に当該「学習の機会提供事業」を積極的に提案し、重点的な支援を行う。
(4)文献調査受け入れの判断を支援する取組み
上記のフォロー対応や支援を通じて活動を拡充していただいた団体との協働等により、自治体当局、地方議会への情報提供や共同の学習会等を適宜行う。
これらを通じて、文献調査受け入れの判断に向けて、各種行政手続きや地域の将来構想等と事業との関わり方、また、文献調査受け入れ後に自治体や機構が地域で行う取組み等、事業に伴う社会的側面の取組みについて共に考え、相互に理解を深め、自治体当局や地方議会において検討と熟議を重ねていただけるよう努める。
また、これらの活動を迅速的確に進めるため、必要に応じて活動拠点を設置する。
(5)広域的な情報提供と「応募」・「申入れ」に向けた環境整備
自治体や団体等の意向を踏まえて、地域のみなさまを対象に更なる幅広い情報提供や意見交換等を行うとともに、周辺自治体や県当局等も対象に広域的な情報提供を行う。これらにより、自治体からの文献調査への「応募」、また、機構が行う調査や理解活動等への理解と協力に係る国から自治体への「申入れ」に向けて環境を整える。
2.対話活動を効果的に充実させるためのマネジメント
(1)公正性・信頼性が確保される運営企画の立案等
対話活動に際しては、公正性と信頼性が確保されるよう、活動目的や運営ルールを明確化したうえで活動内容を具体的に設計する。そのため「対話活動改革チーム」は外部専門家及び有識者の知見や他の類似公益事業や公共事業での事例等を参考に創意工夫を重ね、参加される方々の目線に立ってその多様な関心やニーズ、ライフスタイルに対応した活動となるよう様々な提言を行う。また、対話活動の企画立案及び運営に際しては、機構の取組みを身近に感じ信頼感を持っていただけるよう説明会等の会合については「手作り・直営実施」を基本とする。
更に、情報提供等を行うに際しては、科学的な正確性はもとより分かりやすさを追求して説明資料や広報ツール等を工夫し、品質の向上に向けて絶えずこれを見直すとともに、取組み姿勢から誠意が伝わるよう丁寧な運営を行う。
(2)効果的な事後広報の充実
説明会等に来場されなかった方々にも情報をお届けできるよう、機構ホームページへの掲載やメールマガジン、SNSメディア、冊子等を用いて、また中央、地方の報道機関や地域のミニコミ誌への記事化の働きかけ等を通じて、広く、タイムリーに、分かりやすく活動内容等を公表し、効果的な事後広報に努める。
(3)現場マネジメントの強化
対話活動の運営に際しては、機構職員の「顔の見える取組み」や双方向の対話が充実するよう、全体統括者を明確にして現場マネジメントを強化する。また、「リスク管理室」と密接に連携して業務管理やリスク管理を強化する。
更に、地域特性等に応じてきめ細かく対話活動を行うこと及び全国各地での関心の高まりへ迅速に対応することの必要性に鑑み、各地の発電用原子炉設置者等と密接に連携する。発電用原子炉設置者等の協力・支援等を得る場合には、その役割や関与の仕方を必要の都度ルールとして明確化し、諸活動の公正性と信頼性を確保する。
(4)社会的側面等の調査・研究・立案の取組み
自治体や地域のみなさまに、地域社会と事業との関わりについて分かりやすくリアリティをもってご理解いただき、学習活動や文献調査受け入れ等の検討を具体的に進めていただけるよう、事業が地域社会に与える影響、合意形成の進め方、地域共生の進め方等に関する情報提供を一層充実させる。具体的には、経済社会影響調査の実施内容、「対話の場」の形成方法、交付金等を活用した地域共生モデルプラン等に関する調査・研究を深め、地域のみなさまに検討していただけるよう、機構として取組み案を取りまとめ、共に考えていただく。
また、法的・倫理的問題等も含めた合意形成に係る諸課題等について、関係学会や専門家等の知見を得て調査・研究を進め、その成果を対話活動へ反映する。
更に、海外情報や技術的内容等の個別テーマに特化した講演会や勉強会等も適宜開催し、一般のみなさまはもとより、報道関係者、多様な分野の専門家や関係学会の関心喚起を図る。
こうした取組みを通じて、安全第一に事業を遂行する事業主体としての信頼に加えて、地域の声に耳を傾けながら事業とともに地域貢献も進めるパートナーとしての信頼が得られるよう努める。
(5)実施結果の分析・自己評価及び改善
対話活動の効果(地層処分の社会的受容状況等)や社会のみなさまから寄せられた関心や疑問の原因等について調査・分析し、事業活動へ速やかに反映してこれを改善するとともに、これらの取組みを総合的に自己評価する。また、評議員会による評価・提言等、有識者や専門家から助言を得て、取組みの改善を図る。
更に、これらの取組みの所産は適宜マニュアル等に文書化して蓄積し、業務運営の更なる改善や人材育成に役立てる。
3.対話活動を円滑に実施するための人材の育成・体制整備
上記の対話活動を、公正で信頼される取組みとするとともに効果的に実施するため、人材の育成及び体制整備に取り組む。具体的には、日常業務におけるOJTや反省会の開催はもとより、外部の教育資源の活用、定期的なロールプレイング研修、メディアトレーニング研修、知識向上研修等を通して、技術系職員を含む機構大としての対話力の研鑽に資する取組みを積極的に進める。
また、必要に応じて発電用原子炉設置者等から人的支援を得て、対話体制の増強を図る。更に、外部の専門家、学会やオピニオンリーダー、ファシリテーター等の協力を得て、対話体制の充実を図る。
Ⅱ 技術的信頼性の一層の向上と計画的な技術開発
1.「包括的技術報告書」等を活用した地層処分技術集団としての信頼獲得のための情報発信
(1)「包括的技術報告書」のレビューを通じた技術的信頼性の更なる向上
「包括的技術報告書」において検討してきた地層処分技術の信頼性の確認と更なる向上を図る。具体的には、地質環境特性の調査・評価、人工バリアの設計・施工技術等の工学的対策及び閉鎖後長期の安全性の評価等に関し、日本原子力学会によるレビューを実施して一層の技術的信頼性を獲得する。また、レビュー結果を踏まえて適宜追加検討を行い、同「報告書」を修正したうえ、国際的専門機関であるOECD/NEAによるレビューの準備を進める。
(2)「包括的技術報告書」等を活用した分かりやすい情報発信
上記(1)の取組みと並行して、マップ、「包括的技術報告書」及び「付属書」、「導入編」等において検討してきた技術開発成果を活用して、様々な機会、手段、素材を用いて、広く社会と積極的にコミュニケーションを図る。具体的には、機構ホームページに設置する同「報告書」を中心とした技術開発成果に係るコミュニケーションツールの補強や改善を継続的に行い、情報提供内容がその根拠とともに容易に閲覧できるようシステムを工夫するとともに、Q&Aデータベースの拡充・更新、機構ホームページのFAQの見直しを行う。
また、技術開発成果報告会、諸外国の実施主体との情報交換、国内外の様々な分野における学会発表等を利用して、広く積極的に情報発信する。
これらの取組みを通じて、社会のみなさまの関心や様々なステークホルダーのニーズに応じた技術情報を提供し、我が国において地層処分が確実に実現できること及びその安全性が確保されることを、体系的に、かつ、分かりやすく提示する。
2.地層処分技術の一層の信頼性向上のための計画的な技術開発
「全体的な計画」のもとに作られる新たな「中期技術開発計画(2018年度~2022年度)」の策定を踏まえて、地層処分技術に対する一層の信頼性の向上ならびに経済性・効率性の向上に資する技術開発を実施する。具体的には、同「計画」において大別した主要項目に即して、主に次の技術開発を計画的に進める。
●「地質環境の調査・評価技術」
今後の概要調査に適用する調査・評価技術の信頼性の向上を目的として、ボーリング孔の掘削・調査技術の合理化及び最適化を図るとともに、長期的な自然現象の発生可能性や地質環境特性の長期変遷等に係る評価技術の整備を進め、多様な地質環境に対応するための科学技術的な知見を拡充する。
●「処分場の設計と工学技術」
安全かつ効率的な処分場の最適化に向けて、代替材料(オーバーパック及び緩衝材)の検討を含めた人工バリア仕様の最適化、地下火災リスクへの対応、TRU等廃棄体の閉じ込め性能等の向上、閉鎖前の処分場の安全性評価技術の向上について検討を進める。
また、安全の確保を大前提に、経済合理性を追求した現実的な人工バリア仕様、地下施設レイアウト等に関しても検討を進め、「包括的技術報告書」の検討内容から一層の合理化及び最適化を図る「処分場の概念設計」の取りまとめに着手する。
更に、将来の実施段階を見据えて、建設工事の自動化技術についても研究に着手する。
また、安全性を損なわない回収可能性の確保に向けて、処分場の建設・操業に伴う水理・化学的影響の評価技術の開発を行う。
●「閉鎖後長期の安全性の評価技術」
閉鎖後長期の安全性の評価に係る信頼性の向上を図るため、シナリオ構築技術の高度化、核種移行解析モデルの高度化及び核種移行解析に用いるパラメータに関するデータの整備を進め、処分場閉鎖後の地質環境の不確実性を踏まえたリスク評価技術を開発する。
3.事業の実施に必要となる技術マネジメントの一層の強化
(1)技術マネジメントの推進
事業の基盤を確かなものとし、今後地層処分技術の持続的な改善と向上を図るため、技術マネジメントに関する以下の取組みを実施する。また、これを支える人材育成プログラム、技術開発体制の充実を図る。
●業務プロセスの改善を継続的に図り、安全と品質に係わる業務運営を常に向上させる仕組み(是正措置プログラム)として、品質マネジメントシステムを段階的に整備する。
●技術開発に係る業務の品質をより確かなものとするため、技術力の向上と蓄積等の観点から、技術開発に係る業務を「自ら実施する業務」と「委託により実施する業務」とに区別する。
●委託により実施する業務に関しては、業務管理を強化する。具体的には、業務委託の計画段階から委託に係るリスクアセスメント等を実施して委託の適切性と合理性、リスク等を確認するとともに、委託先に対し適切な業務管理を行う。これらの取組みに際しては、「リスク管理室」と緊密に連携する。
●様々な要求事項等を基に技術的な要件を階層的に整理し、具体的な設計として展開するためのシステムの整備を進める。具体的には、法令、国際的原則や指針等で示された要件を最上位に配し、サイト選定、処分場の設計・安全評価に求められる要件、ステークホルダーからの様々な要求事項等を基に、技術的な要件を階層的に整理し、実際の処分場設計等へ展開する。
●技術的情報や知見を分類して階層化し、透明性等を確保した知識ベースの整備とそのマネジメントシステムの構築を進める。具体的には、基盤研究開発機関等から移転された技術、「包括的技術報告書」で整理してきた地質環境の調査・評価結果、設計内容、安全評価の内容、また、同「報告書」の作成に伴って整備した国内外の最新の知識・情報・データを体系的に整理するとともに、透明性、追跡性、検索の容易性を確保した一元管理システムを構築する。システム構築にあたってはIT技術を活用する。
●品質管理及び品質保証を進めるための考え方を整備するとともに、データ等に必要とされる品質レベルを確保するための要素技術、技量、プロセスを継続的に改善していく。
なお、技術開発の成果に関しては、専門家によるレビューや海外のベンチマークにより内容の充実を図る。具体的には、技術アドバイザリー委員会の助言や評議員会による評価・提言を踏まえるとともに、海外の処分施設の実設計等との比較検討を行うことで技術開発成果を確認し、以降の技術開発における取組みの具体化につなげていく。
(2)技術開発を支える人材の確保と育成
長期にわたる事業展開を見据えて計画的に技術人材を確保するとともに、機構の技術力の充実と人的基盤の拡充に資する育成に努める。具体的には、新卒・キャリア採用に計画的に取り組むとともに、国内外の関係機関等との連携を一層強化して共同研究や国際共同プロジェクトへ積極的に職員を派遣し、それらの機関が有する研究インフラの活用等を通じて人材育成の充実と技術力の向上を図る。
また、事業の段階ごとに変容し、かつ多岐にわたる技術開発業務に関し、具体的な業務内容を定義し、その全体像を体系的に明確化する。主に若手職員に対しては放射線管理や原子力安全等、原子力事業者としての基礎的知識に関する教育機会の充実を図るとともに、他の事業分野における現場業務への派遣等も含めた様々な現場業務を実体験させる。一定レベルの経験を積んだ技術者に対しては専門的能力の充実強化を図る等して、要求される能力に応じた人材育成を進める。
このほか、対話活動への積極的な参加や機構内のロールプレイング研修等を通じて技術系職員の対話力の研鑽を図る。
(3)関係機関等と連携した技術開発の推進及び技術交流・国際貢献
実施主体としてのリーダーシップと企画力をもって、我が国における地層処分技術の開発を推進する。このため、国内関係機関との連携を一層深め、情報交流や共同研究を通じて効果的かつ効率的に技術開発を牽引し、「全体的な計画」の進捗を管理する。
また、国際機関の活動や国際共同プロジェクトへの参画、海外関係機関との連携や技術交流等を通じて最新知見の導入と技術力の強化を図る。更に、我が国で蓄積した技術や経験を国際社会へ積極的に提供すること等により、地層処分技術の信頼性を国際レベルで高めるための取組みを進める。特に、今後、地層処分計画に本格的に取り組もうとしている国々に対して貢献していく。
Ⅲ 文献調査の円滑な着手に向けた取組み
1.地域に根差した対話・交流活動の実施
上記Ⅰで述べた対話活動の進捗により文献調査を受け入れていただいた市町村(以下、「調査市町村」という。)を中心に、地域のみなさまの声をしっかりと受け止めて対話・交流活動を行う。そのため、調査市町村の存する地域に活動拠点として現地事務所を開設する。
また、調査市町村のご要望に応じて、地域のみなさまに地域社会の発展と事業との関わり等について検討と熟議を行っていただくための「対話の場」の設置と運営に協力する。この「対話の場」においては、事業の内容や安全確保策のほか様々な情報を提供するとともに、文献調査や経済社会影響調査の進め方等に関する説明及び交付金等を活用した地域共生モデルプランに関する提案等も行う。
こうした取組みにより地域のみなさまとコミュニケーションを深め、ご意見やご要望等を反映しながら、対話・交流活動や文献調査及び経済社会影響調査等に着手する。
2.文献調査計画の取りまとめと調査の着手
調査市町村における「文献調査計画」(調査の手順、収集を想定している文献、評価の概要のまとめ方等)を取りまとめ、調査市町村をはじめ地域で説明会等を開催し、機構がどのような調査を行うかについて情報提供を行い、地域のみなさまへ文献調査への協力を要請する。
そのうえで、必要となる文献等の収集に着手する。
なお、文献調査の開始等に伴い必要となる場合は、本事業計画を改定する。
Ⅳ 事業活動の更なる高度化に対応した組織運営
1.ガバナンスの一層の強化とリスクマネジメントの徹底
「業務の適正を確保するための体制の整備について(理事会決議)」及び内部監査の実施等に基づきガバナンスを一層強化する。
特に、「リスク管理室」を中心に機構大でのリスクマネジメントを強化する。具体的には、当該部署において、リスクマネジメント委員会活動の定期的な実施、リスクマネジメントの実施状況の恒常的なモニタリングと指導・助言、外部のリスク事例の調査や機構内周知、関連する職員研修等を実施する。これらの取組みを通じて、各種業務に係るリスクアセスメントの強化やリスク顕在化の未然防止等、リスクマネジメントの徹底を図る。また、万一問題が発生した場合には、的確かつ迅速な情報公開等を行うとともに、必要に応じて「リスク管理室」の主導のもと危機管理体制の構築を行う。
また、高度化するサイバー攻撃への対応や情報漏えい防止への対応等に係るセキュリティ対策の強化を継続的に進めるとともに、ケーススタディや外部専門家による講習会等の職員研修・啓発活動を定期的に実施してコンプライアンスの徹底を図る。加えて、新入職員研修及び新規着任者研修や部門を越えたディスカッション等により経営理念の定着を図る。
事案の再発防止に向けた取組みについては定期的に進捗状況を点検し、評議員会へ報告する。
2.絶えざる業務改善と「学習する組織」づくり及び「チーム意識」の向上
事業の全体的な進捗について中期事業目標に照らした確認を行うとともに、個別業務の実施状況については内部会議による定期的な自己点検及び評議員会による評価・提言、内部監査、部門横断のワーキンググループ活動等を実施して、事業活動の改善と効率化を絶えず進める。
また、業務運営に際しては、外部専門家及び有識者の知見の活用、諸外国における取組み及び他の類似公益事業や公共事業での事例の参照、法的・倫理的問題等に係る社会的側面の研究成果等の学習成果を組織として共有し、その蓄積を基に更に成長する組織づくりに努める。
更に、各種会議の積極的な運営や機構内コミュニケーションの活性化等により部門横断的な情報流通を促進して縦割り型組織運営を防止するとともに、創意工夫の実践機会や発表機会を拡大する等して、役職員一丸となって業務遂行にあたるチーム意識や組織改善に向けた意識の向上を図る。
3.業務委託の厳選と管理の徹底
各種の業務については、その目的、人的リソース、業務内容の専門性及び業務委託によって得られる効果等を検討し、業務委託基準やチェックリスト等に基づいて「自ら実施する業務」と「委託により実施する業務」とに区別する。そのうえで、後者に関しては、専門性及び費用対効果やリスク等を十分に考慮し、委託案件を必要最小限の範囲で慎重に選定して委託を実施する。委託先に対しては遵守事項や作業手順を文書で示すことに加えて定期的な会議や意見交換、立入検査等を通じて、業務管理指導を徹底する。
また、再委託先を含めて委託先の管理が適切に行われているかどうかを内部監査等で確認する仕組み、必要に応じて立入検査を行う仕組み、また、業務完了後に実施内容を振り返り評価する仕組みを整備するとともに、委託業務に係るリスク等について機構内部での注意喚起に取り組む。
更に、一者応札を改善するため、事業者向けの説明会における情報提供や一般競争入札参加資格への登録の勧誘等に引き続き取り組む。
4.組織体制の整備
文献調査受け入れを目指した対話活動の更なる充実と事業展開の拡大等へ柔軟に対応するため、活動拠点や現地事務所の設置のほか、必要となる組織体制の整備と増強を行う。
5.人材の確保と育成等
人材の確保に関しては、「中期人材確保・育成方針」等に基づき、プロパー職員比率の増加や専門能力を有する職員の確保を進める。具体的には、求人活動の拡充により新卒採用を計画的に実施するとともに、事業の進捗に応じて、経験豊富な人材のキャリア採用と出向者確保とのベストミックスを目指す。
人材の育成に関しては、新人、中堅、新任役職者を対象とする階層別研修等を通じて計画的に進める。また、文書作成基準の制定等により文書作成能力を高める。更に、メンタルヘルス研修や労働時間の適切な管理等を通じて良好な職場環境を醸成し、働き方改革の動向を踏まえつつ職場総合力の一層の向上と活性化を図る。
対話活動に求められる対話力・運営力・現場統括力の向上や技術開発に求められる専門的能力の向上・現場経験の付与等、各部門において実施する職員研修等の多様な取組みについて適宜、実施状況をとりまとめ、「中期人材確保・育成方針」及び「目指すべき人材像と部門別育成計画」等に照らして着実に進められているか、チェックアンドレビューを実施する。
6.適切な情報公開
情報公開規程に則って積極的かつ適切に情報公開に取り組み、事業の透明性を確保することにより機構への信頼性を高めていく。
Ⅴ 拠出金の徴収
「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(平成十二年法律第百十七号)第11条及び第11条の2の規定により、発電用原子炉設置者等から拠出金を徴収する。